リコリス

カナルタ 螺旋状の夢のリコリスのネタバレレビュー・内容・結末

カナルタ 螺旋状の夢(2020年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

ナンキ、覚えておいてくれ、伝えてね、とセバスチャンや妻が語る。ナンキにビジョンを見せるために、セバスチャンはマイキュアを作り、祖先の霊を歌で呼ぶ。プ~ン。

セバスチャンがシュアール族の伝統にこだわり、薬草を摘み、髪を切らないのは、シャーマンだった父を継ぐ気持ちなのか。けれど妻が語るように、父母たちの採集・狩猟だけでは既にエクアドルのアマゾン熱帯雨林でも生活が成り立たなくなっている。

皆が手伝い仕事をする際の礼として饗応する発酵酒チチャ。木を切ることは汚染と同じ(竹は自然の水道…)。蛇殺しの夢の力で村長になり、政府の役人とわたり合う女性パストーラ。政府は開発財源の分配に苦心しているし、若者は徐々に生活も考え方も都市化されていく。実際、セバスチャンらも、祖先たちのように自然と一体化して暮らしてはいないし、スペイン語も喋るし、都市に買い物に行くし(村人の小ぎれいな服装に、「クリスマスの品物を買いにいく云々」もあったような…)。そういう力は失われつつある。医療や通信手段がないと、命に関わるし。

熱帯雨林には多種多様な植物、虫、動物がいて、そこに土着の人々だけでなく、都市部の人々も来て、家に野生のコウモリが入ったり。人間が自然に入り込むと、貴重な薬草も見つかるだろうが、野生動物を介した未知のウイルス類も来るかもしれない。

セバスチャンのような祖先の精霊?自然信仰から遠ざかった人々は、何を信仰するのか。彼らのような自然との上手い折り合いのついた生き方を記憶、というか、遠い遠い祖先の記録から思い出して、マイキュア無しでも正しいビジョンを見たいと願う。

夢を見なさい=カナルタ
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