はぐれ

異邦人 デジタル復元版のはぐれのレビュー・感想・評価

異邦人 デジタル復元版(1967年製作の映画)
4.0
ヴィスコンティ作品で唯一DVD化もVHS化もされていなかった幻の作品がアマプラでレンタルされていることを知り早速ありがたく鑑賞🙏

画面全体を覆うアルジェの気だるくなるような灼熱の陽気。裁判所の傍聴席で大量のうちわがパタパタと扇がれる場面が強烈な印象を残す。ヴィスコンティらしからぬ、まるで勅使河原作品を見ているかのような不条理な世界観とカット割り。ヴィスコンティのフィルモグラフィーにおいて異色作と評されている理由がよくわかる。

無神論者である点や母親を老人ホームに入れる行為や母親の葬式で泣けないことや恋人に愛を告げずに婚約してしまう行為など今となっては当たり前の価値観や行動をまるで魔女狩りのごとく責められる世界。不寛容で理不尽な世間の仕打ちに敏感であった巨匠だからこそカミュの原作に共感したのかな?なんて想像してしまう。

「太陽のせいだ」。なんでも単純な理由や理屈を求めるマスメディアや人間の表層的な心理に対しての痛烈なカウンターパンチ。それがより鮮明化、先鋭化されている現代だからこそより響くテーマだよね。
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