まるたけ

ひらいてのまるたけのネタバレレビュー・内容・結末

ひらいて(2021年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

原作未読。ただ、綿谷りさという作家には、ままならない人物や感情を毒気のあるツッコミで彫刻し、立体化していく書き手というイメージがある。意地悪じゃないとできない芸当だが、いつも読後感は悪くない。ツッコミに愛と笑いがあるからだと思う。

この映画もやはり、ままならない人物や感情が表現されている。けれど、綿谷りさ的なツッコミは入らない。だから画面には終始不穏な空気が漂い、監督がどんな風に登場人物を見ているのか、捕捉することが難しい。そのことが逆に、一種のサスペンスとなって、ぐいぐい観客を引っ張っていく。

終盤になるにつれて、それぞれの人物の真意が明らかになる。同時に、監督の狙いも見えてくるのだが、このクライマックスへと向かう一手一手も着実で的確。ラスト10分、桜の木から折り紙そして告白へと至る流れには、心臓をどつかれたような感動があった。

映画にしかできないやり方で、これほど綿谷りさの小説を巧みに再構築した映画は、これまでなかったのではないか?(原作未読で言うなよ)
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