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対峙のvenom9のレビュー・感想・評価

対峙(2021年製作の映画)
4.1
激しく心揺さぶる、静かな作品でした。
惨劇から数年経ち、高校での無差別殺人の被害生徒の両親、加害生徒の両親が面談する話です。作品の過半が、教会の一室での4人の会話シーンです。
どちらが被害者かペリー夫妻(ジェイとゲイル)の登場でわかりましたが、意図的にどちらが被害者か加害者かわかりにくいようにしているのか、観ていて若干戸惑いました。それほど加害者の両親リチャードとリンダ、特にリチャードが悪びれていないように見えたのですが、観ているうちに氷解しました。子を亡くした悲しみに加え、加害者の親であるがゆえに良心の呵責と社会的制裁に消耗していたのです。防御反応の表出と解釈しました。
彼らの過去から惨劇の当日、事件後の日々が語られ、観ている者の想像力で映像が脳内補完されます。
シンプルな構成の作品ですが、なぜ教会の女性職員の人となりを描きこんだのか(なくても作品は成り立つ)、荒野のフェンスの針金に結えられた赤いリボンが度々映ったりと、謎めいたところもありますね。
被害者の母、ゲイルが息子の思い出を語るシーンは息子が憑依しているようにもとれる演技で、戦慄しました。
ゲイルばっかり恐縮ですが、彼女があなた方を赦すと話した時、自分自身や夫を赦そうとしているように見えました。その後、日差しが強くなってか白飛び寸前まで室内が明るくなりましたね。教会を去る直前聴こえてきた賛美歌といい、まるで彼らの心に信仰心が戻ってきたような、救いと希望を感じさせる終幕でした。
(2024年4月 U-NEXTで鑑賞)
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