けーはち

バッハマン先生の教室のけーはちのレビュー・感想・評価

バッハマン先生の教室(2021年製作の映画)
3.5
ドイツの小学校の担任教師バッハマン先生の授業光景。ドイツでは小学4年に相当する時点で進路がざっくりエリート・実学・職人みたいな感じで分かれる。重要かつ多感な時期、しかもトルコやブルガリアの移民も沢山いて年齢も文化も言語も宗教も多様に異なる教室、どう子供たちに教えて行くか211分の長尺で迫る。長い……とはいえほぼ教室を撮るドキュメンタリーだし、倍速でもまあいけるか🤔

冒頭数分の仮眠(瞑想?)タイムに始まる集中力を切らせないような工夫。移民の子で言葉も覚束ない生徒には、音楽に合わせて歌の形で物語る。聴きたくない子は外に出ていく。自由。でも議論のルールはきちんと徹底する。無秩序ではない。気のおけない関係になりながらも、多様性の受容を自然と染み込ませる。同性愛なんて気持ち悪いという生徒に対して「それは本当に君の感想か」と問いかけるシーン。その価値観は常にどこから来たものなのかは問い直す必要がある。

もっとも印象的なシーンは、とある生徒が創作した物語を「よく眠れそうだ」と称した生徒に対し、「侮辱か賞賛かな」みたいな返答をすると、「どこが侮辱?」と帰ってきたところ。母親の寝物語でよく眠れそうな物語は、良い物語だ。映画を見ている観客が、「よく眠れそう」とか言ったら、まず侮辱だと思いがちだが、そうはならないこともある可能性に思いを馳せる。それが多様性ってものなのだ。