一人旅

ボーはおそれているの一人旅のレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.0
アリ・アスター監督作。

『ヘレディタリー/継承』(2018)、『ミッドサマー』(2019)の鬼才アリ・アスター監督最新作で、母親を亡くした男の里帰りの旅路を描いた異色ドラマです。

治安の悪い地域のアパートで独り暮らしをしている中年男:ボウを主人公にして、直前まで電話で話していた母親がシャンデリアの落下事故に巻き込まれ絶命したという報せを聞いた主人公が母親の亡骸に対面すべく故郷を目指し旅を始めるが、行く先々で予想だにしない不条理な出来事に巻き込まれてしまい…という里帰りロードムービーですが、停滞に次ぐ停滞でなかなか故郷に帰れない男が遭遇する悪夢のような体験がアリ・アスター流の映像美学で映し出されていきます。

現実と虚構が複雑に混濁した悪夢のような夢幻世界を彷徨う男の奇妙な冒険の顛末を、アニメーションや劇中劇、過去の回想といった要素を複合的に織り交ぜつつ3時間という長尺の中に描いて、平凡な男とその母親との厄介なしがらみを浮かび上がらせた異色作で、主演の名優ホアキン・フェニックスが現実と虚構の境界線上を彷徨う男を憔悴の表情で妙演しています。
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