自分がヘルツォーク作品に期待していた「まがまがしさ」「過剰さ」「異端さ」はなく、真面目で堅実なトーンのドキュメンタリーになっていたのは、やや拍子抜けであった。
BBCが自国の紀行作家のドキュメンタリーをつくりました、という感じ。
そして、「世界は徒歩で歩く者に、その姿を見せる」というヘルツォークの警句が引用されているものの、歩くことの哲学が今回の映像からは浮かび上がってこず、全体として親友の弔いが前景化しすぎているように感じた。
ただ『パタゴニア』『ソングライン』の作品を多層的にレビューする構成になっており、チャトウィン像の更新はかろうじてはたせているのかな、という印象。