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⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のNowLoadingのレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
3.8
 本日の一本。アマプラ入りしたので鑑賞。

 先ずは結論から。本作は「ゲゲゲの鬼太郎」という原作を巧みに利用した「犬神家の一族」なのである。つまり、トッド・フィリップスの「JOKER」な訳だ。監督が社会派映画を撮影したいが予算を獲得するにあたって「バットマン」の宿敵ジョーカーのオリジンを原作から逸脱しつつ面白可笑しく笑えない一作として作り上げた。本作もその毛色が垣間見える。

 現代で「犬神家」は使い古された話で儲けに直結しない。そこで「墓場鬼太郎」で既にもうやった鬼太郎の生誕の秘密をワザワザ掘り返して令和最新版として映画鑑賞に耐えうるリッチなビジュアルに仕立て上げた。鬼太郎エッセンスはプロローグとエピローグしかない。鬼太郎の生まれ方をエンディングで見せるなど題名とはかけ離れた作品作りだ。まるでもう知ってるだろ?といわんばかりに。

 昭和生まれのスタッフ、昭和生まれのキャスト、昭和生まれのターゲットとトコトンやりたい事に忠実であくまでも鬼太郎の体裁で見事に現代版犬神家をやりきった。龍賀家の末路までちゃんと描いている辺りこの渋いストーリーにハサミは入れさせまいとする執念が感じられる。

 そこに水木という水木しげるの従軍キャンペーンエピソードを盛り込めば金田一耕助とは異なる主人公像ができる。後はゲゲ郎なる妖怪と人間の橋渡しキャラを盛り付ければ出来上がりという鬼太郎を知らない世代にも彼らのバックボーンに興味をそそられるように味付けされていて良い。バディものとしてもう少し二人の友情が深まるシーンが欲しかったがこれでも必要十分か。

 ミステリー要素や衝撃の真実なんかも横溝正史ミステリのオマージュとなっているからキッチリ容赦せず描写。ぼかしても文句言われんが敢えてしなかったのは彼らのやりたかった作品の本質が故だろう。

 令和の五月蝿い時代に戦後のミステリー殺人事件をお届けしたいという制作陣の執着が生んだ一作。アニメという作り方を変えども普遍的な作劇とそれを支える豪華キャストで盤石の出来栄えだ。なによりメッセージが簡潔で清々しい。オジサンから鑑賞した若い人への「本作はミステリーの入口、横溝正史はいいぞ。」ということだ。(木内秀信さん久し振りに声聞いたな、「DARKER THAN BLACKの黒以来じゃない?」)
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