多タロ

エンドロールのつづきの多タロのレビュー・感想・評価

エンドロールのつづき(2021年製作の映画)
2.7
貧しく、血筋だけが心の拠り所となっているお堅い父親の教育方針で映画=低俗なものと教えられていた少年がこれに興味を持ち始め、ひょんなことから映画館の上映技師と知り合いになったことでさらに映画にのめり込むことに。周囲の大人たちの何気ない言動や田舎特有の閉鎖的で鬱屈とした空気から少年はいつしか自らの人生について思いを巡らせるようになる..といった風なジュブナイルもの。
パン・ナリンなる監督の実体験を下地に作られた本作はアカデミー賞はインドの外国語映画賞代表作品に選出されたタイトルであるものの、同年にRRRというモンスタータイトルが公開されたためにお株を奪われた感が強い。ド派手アクションやスーパースリラーではなく幻想的な画やイケメン美少年がたくさん見たいなら⭕️。


※以下ネタバレ含
ある日興味のない映画に連れて行かれた主人公・サマイ少年。趣味ではないタイトルのため映画の内容には入り込めなかったものの、薄暗い館内の映写室から投影される蠱惑的とも言える光に心を奪われ、映画館と映画の虜となってしまう..と主人公については映画に対しての原体験がしっかりと描かれているため、これより後はストーリー上の肝となるセルフ映画上映会に至るまでの情熱というか執着というかが理解できるのだが(田舎故に娯楽に飢えているのかもしれないが)周囲の友人たちにはこういった描写が欠けているために、サマイと共にフィルムの窃盗までやらかす彼らの行動にいまいち説得力が感じられないのが少々残念。
前述した通りオスカーにおいて本作はRRRの巨大過ぎる存在に隠れてしまったタイトルであり、これを比較すると基本的にエンタメに振り切ってどこまでもケレン味とインパクトのある画を追求した後者よりはインドの根深い身分制度や地域格差を要所要所で取り入れている点で明らかに社会派的。画作りについても幻想的でアーティスティックなシーンが印象的なこれがノミネート止まりで結果が伴わなかったのは皮肉としか言いようがない。と言っても冗長とも取れるくだりが長かったりするのは事実である(と自分のは思う)ため、起伏に富み、ジェットコースターのようなカタチで心揺さぶられる映画に軍配が上がるのも致し方ないのかもしれない。
バラモンの階級にあっても貧しい暮らしをしていたりや英語を習得していなければ職を失いかねないというインドの現実は妙に生々しく、ジャップも他人事ではないと観ていて恐ろしく感じた。
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