まーしー

前科者のまーしーのレビュー・感想・評価

前科者(2022年製作の映画)
3.5
保護司とは——犯罪や非行に陥った人の更生を任務とする非常勤の国家公務員。報酬はない。
この保護司に焦点を当てた本作。ずしりと胸に響く内容だった。

主人公は、保護司の阿川(有村架純)。殺人や詐欺などの罪を犯した人に寄り添い、更正を促す。
同僚を殺害した過去を持つ工藤(森田剛)も、阿川の厄介になる一人。
そして、仮出所中の工藤の生活基盤が整おうとする時、物語は急展開を見せる。

阿川の日常と同時並行で描かれる、連続殺人事件が本作の鍵。
犯人は誰か。その動機は何なのか。
映画の進行とともにその真相が明らかとなるが、阿川や工藤の物語と交錯するストーリーはお見事。
当初はバラバラに見えたエピソードが、終盤に向けて収斂していく。

有村架純は美女枠を封印。オシャレとは言い難い眼鏡をかけ、どこか暗さの漂う、野暮ったい女性を好演している。
森田剛もアイドル出身とは思えない熱演。恥ずかしながら、物語の終盤になるまで気づかなかった。それほどオーラを消し、暗い過去を持つ犯罪者になり切っていたように思う。

法律や福祉だけでは救えない元受刑者。
厳しい現実が待ち受ける彼らの相談相手となり、心の支えとなる保護司は、「奇特な人」という表現だけでは足りないだろう。
お金を貰って犯罪者の反省・更生を促す弁護士と違い、保護司は相当の強い思いがなければ務まらない。
一方で、犯罪者に更生の機会を与える保護司は、被害者やその家族の心情を逆撫でする存在であることも確か。
美化するだけで終わってはいけない存在だとも思った。