Fumie

英雄の証明のFumieのネタバレレビュー・内容・結末

英雄の証明(2021年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

この主演ラヒム役のアミールさんが上手い上手い、他の作品は見たことないんだけど、ちょっと猫背で自信なさげな正直者の不器用な男って感じで見事だった。

欲が出るのは人間当たり前のことで、その欲が倫理的であるかどうかだとは思うんだけど、落とし物を落とした本人に届けることが英雄として持ち上げられる社会イランは日本と大きく違うなと。財布落としても戻ってくる日本、みたいなところあるし。最近は知らないけど。
時々ちょっと調子に乗っちゃうラヒムも滑稽ではあるけどそれが人間の姿よね、と納得する。
あまり主張しない彼が周りの言葉に乗せられてスルスルと持ち上げられ、歯車が狂ってくると言った言ってない議論になったり、保身ばかりの乗せた側に随分とイライラした。
ラヒム自体も小さな嘘を周りに乗せられてついてしまうし、そこは見ててダメだよ嘘は...と多少イライラを感じたけど。
まあ彼にとっては死活問題だったし生活のために必死だったわけだけど。

最後の方はあまりにラヒムが不憫で涙出ちゃった。名誉を守りたい、子どもを守りたいという彼の強い意志、彼の大切にしたいものが明確化されていくところに感動。
ただその過程が理不尽な社会の中で気付いていき正直者は馬鹿を見る状態、結局嘘か本当か分からない真偽不明な情報の世論の中なので辛い。彼の表情には諦めもあり、最低限守らなければならないことを必死に守る姿は痛々しくもあり、弱者は諦めるしかないのか...と絶望もあり...。

刑務所でお前は馬鹿だと言われ、馬鹿だからここにいる、と言ったラヒムの言葉その通り。

イランでは借金で刑務所入ったり刑務所に休暇があるの興味深かった。
金貸してた元妻のお父さん、何も悪くないのにチャリティーの現場で気の毒だったな。
そこでも悪いことしてない人が世論で悪い人状態になってしまう現象があり、対比させてて見事だった。
善人かどうかなんて、人間如きにジャッジできないよね。
Fumie

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