Fumie

ペルシャン・レッスン 戦場の教室のFumieのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

なんだかずっとヒヤヒヤしながら観ていた
造語で乗り切ったの凄すぎるし、収容所の人たちの名前が由来だから名前もちゃんと覚えててどこまでが実話なのか分からないけど脚本として素晴らしいなと思った
とにかくナチスによるユダヤ人虐殺の話は知らなければならない事実だけど観ていてとてもしんどい...

ナチス将校のコッホは虐殺に加担している自覚がなく、「自分は殺していない」というきっと当時上層部で(様々な国の)そういう考えの人わりといたんだろうなという、見事な都合良さ 汚れ仕事は下々にやらせる
観てるうちにコッホに多少同情もしてしまうし彼らも戦争の被害者といえばそうなのかもしれない、だけど多くの人を犠牲にした罪はそれで消えるわけではないし、コッホがナチス入りを決めたきっかけも浅はかでそれを聞いた時のジルの表情が印象的だった

若い男性兵士や女性兵士も、恋愛をしたりダンスに誘ったり嫉妬したり、戦争がなければ普通の若者として楽しく過ごしていたのだろうと思うと胸が痛い
戦争は人を変えてしまうし、若い兵士のマックスも元々あんなに乱暴な人間ではなかっただろう、ジルに執着していたのも戦争の中で何かそういう目的?みたいなものが必要だったのかなとか思ったり...
最後上層部に「やることがないのか」と言われた後の彼は今までのことは何のためだったのか、自分のしてきたことにどんな意味があったのか、のような虚無感が見られた
多くの戦争経験者はそうなのかもしれないしそうじゃないのかもしれないし...

コッホはなんとかテヘランに到着したようだったがやはり都合良くことは進まず、うまく兄にあってほしいという気持ちもあったけどそうならなくてよかった、虐殺加担の罪は大きい

最後ジルが収容所の人たちの名前を1人ずつ言う場面、涙が出た
彼は彼らに生かされたようなもので(彼の運や生きることへの執念ももちろんあるけど)名もなきユダヤ人と言ったコッホの言葉を覆すように、名前を呼んだ
彼らには皆それぞれに名前があった、決して名もなきユダヤ人ではない、それぞれの人生があった
ホロコーストという恐ろしい歴史は決して忘れてはいけないし、世界中の人が一人一人の尊厳を大切にすることを忘れなければ、今また戦争が起きるなんてことないはずなのにな...と悲しく思う
Fumie

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