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ニトラム/NITRAMのkassyのレビュー・感想・評価

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
3.7
オンライン試写にて

第74回カンヌ国際映画祭主演男優賞、第11回オーストラリア・アカデミー賞最多8部門を受賞した作品。1996年にオーストラリアの世界遺産でもある観光地ポート・アーサー流刑場跡で起こった無差別銃乱射事件、通称「ポート・アーサー事件」の犯人を描いた初の映画作品。

まだ事件から25年しか経っていないこともあり、本国ではこの映画の公開について問題になったようだ。

本作を見て感じるのは、手に負えない子供を持つ親の苦悩、親に理解されない子供の苦悩、周りに理解されない母の苦労など、
事件のきっかけは決して簡単なものではないということだ。
発達障害への理解が深まったのは21世紀以降ということで、1996年当時はまだ理解が浅かったのは言うまでもない。
この映画では主人公の発達障害を事件の直接的な原因であるというふうには断定せずに、色んな因果関係があったと匂わせるように多角的に描いている。

まるで子供のまま育ってしまったニトラムが母親につらそうに自分の苦しみを吐露する場面があるのだが、母親はその苦しみを理解できない場面はつらい。
良かれと思ったことも、迷惑だと拒絶される。
でも母親も長年の苦労からそう言った反応をしてしまうのだということが窺い知れる。

また、なぜお金があってなぜ銃を大量に所持していたのか?という背景も興味深い。ヘレンという女性との出会い、そして別れ。

上手くいかない人生を、父と子それぞれの選択を採択してしまう。

無差別殺人は決して許されるものではない。
ただその裏側にある苦しみを知ることで、カウンセリングやその後の社会に生かしていくことが出来るのだと痛感させられ、非常に考えさせられる映画だった。

主役を演じたケイレブ・ランドリー・ジョーンズの演技が見事です。
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