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お早よう ニューデジタルリマスターのleylaのレビュー・感想・評価

4.3
再鑑賞。デジタルリマスターで観れてよかった。

大きなドラマはなく、庶民の日常をコメディタッチで描いたほのぼのとした作品。昔観た時は、子供たちのオナラのイメージばかりだったのですが、今観ると時代背景などがリアルに描かれているのがわかります。

今作が公開された昭和34年は、テレビの普及率が大幅に上がり200万台を超えた頃。家電も少しずつ家庭に浸透し始めています。今までの生活の在り方が変わろうとしている時代に、便利になることで失われる大切なものを小津さんが嘆いているようにも思えました。

同じ住宅が建ち並び、どの家の中もそう変わらない。物質文化で個性を失い、日本の生活も変わってきているのだなぁと実感できる映像でした。

テレビが欲しいと文句を言っていた兄弟が「余計なことばかり言うな」と父(笠智衆)に怒られ、大人だって無駄なことばかり言っているじゃないかとストライキをする。イサムちゃんの可愛さが子供らしくていいです。

「お早う」は無駄な挨拶なのだけれど、なくてはならない潤滑油のような言葉。挨拶によって繋がるご近所たちの姿が描かれます。

無駄なことは言えても
大事なことは言えない

佐田啓二と久我美子の淡い恋に、暮らしぶりは変化しても日本人の奥ゆかしさは変わらないと思えて微笑ましかったです。

教室でのローアングルがよかった。子供たちの絵画の鮮やかな色が並ぶ。今作は小津さんのカラー2作目。洗濯物とかケトルとか赤×黒の看板とか、随所に色使いのセンスが光ってました。
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