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The Son/息子のkassyのレビュー・感想・評価

The Son/息子(2022年製作の映画)
3.6
最速プレミア試写会にて

アンソニー・ホプキンスの『ファーザー』が記憶に新しいフローリアン・ゼレール監督の最新作。
自信が書いた家族3部作の戯曲の、父に続く息子作品である。

私は『ファーザー』公開当時に非常に感銘を受けて、ちょうどその頃次作の『息子』が日本で舞台が上演されるとのことで観劇。(岡本健一、岡本圭人親子による親子共演だった)
その衝撃は忘れられないまま本作の鑑賞となった。

ヒュー・ジャックマン演じる父は再婚して若い奥さんと小さい子供の3人暮らし。
そこへ精神が不安定だという元妻との間にできた16歳の息子が一緒に住みたいと同じ生活を共にするようにする。

鬱という誰にでも起こりうる病。
父親は父親なりにどうにか息子を助けたいとは思っているのだが、
その傷の深さを、彼はどこまで認識でいたのだろうか。
監督が語っていた父を苛む罪悪感が、自分の父のようにはなりたくないという雑念が目を曇らせる。

どうすれば彼にとってよかったのか、見ながら考えてしまう。

まるで認知症を体験しているかのような没入感があったファーザーに比べると、家という小さな空間の中でやや平面的で舞台っぽさのある作品だが、その衝撃は自分にとって改めて考えさせられる作品になるだろう。

ちなみにアンソニー・ホプキンスがヒュー・ジャックマンの父親役として登場するが、『ファーザー』とは全く違う姿なので大変興味深かった。


【アフタートーク】
リモート登壇:フローリアン・ぜレール監督

最初に戯曲を書いたときはパーソナルなものだったが、誰にも起こりうる共感できるものになったと思う
メンタルヘルスは恥ずかしがるが、もっとオープンに会話されていくべきだ

ファーザーは認知症を追体験するような作品だったが、サンは追体験するような作品ではなく、息子を助けようとするがどうしたらいいかわからない。その無力感を描いた。
悲劇だとは思っている。悲劇の中で信じて
すべき会話があったのではないか、と考える問いかけをしている
どうやったら助けられるのか映画を通して投げかけている

父は盲目になってしまっている。愛しているが、それだけではうまく行かない。罪悪感で前が見えなくなってしまっている。
しかしメンタルヘルスを語る時に罪悪感は関係ない。
メンタルヘルスは身体的な病と同じように語られるべき。

悲劇だと観客に感じて欲しかった
フラストレーションや怒りを観客に感じて欲しかった
チェーホフも銃という章があればその後に悲劇があるように、映画でもセリフの中で銃が出てくる

僕は悲劇や自殺を防ぐことができると信じているから

親として子供にしてあげられるスキルがないと受け入れることは辛いこと。しかし時間がない。

ヒューも息子として痛みを抱えていて自分は息子を見捨てたくないという思いがあった
トラウマのサイクルを描いた

現実の世界を見れば悲劇で終わる事が多いので誠実に描きだった

リハーサルを全くしないで撮っている
誠実さを守りたいから

ダサい踊りのシーンは撮影前にヒューが娘さんの前で試して太鼓判を押された

献辞の名前は監督の1人の息子の名前。
キャラクター達の感情は身近なもの。
こういう風に話し合わないといけない。
家族のメンタルヘルスはブラックホールのようなもの。
みんな引き込まれてしまう。
なぜなのか見つけるのは簡単な事じゃない。
受け入れがたい。
自分達は良い親なのかどうなのか、罪悪感が生まれて見えなくしてしまう。
罪悪感や羞恥心をなくせば私達はもっと助け合えると思っている。

観客に辛い気持ちにさせる作品なので申し訳ないと思っています。ただそれが誠実だと思っている

ラストは違う世界になり得たという事を描いた。
銃のシーンは何テイクもなるつもりはなかった。気持ちがフェイクになってしまうから
役者には銃声がないリハだと言ったが、実際は撮っていた。
なので恐怖の表情は本物。
彼らはフレーム外に駆けていくという行動をとった。それは真実。

彼らは幸せな世界になるのは飛躍だが、私達は悲劇を信じられず、幸せな世界を信じたいという気持ちになるだろう。
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