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流浪の月のkassyのレビュー・感想・評価

流浪の月(2022年製作の映画)
3.7
試写会にて
アフタートーク:李相日監督登壇


女児誘拐の被害者と加害者という立場の2人の心の傷と絆を描いた作品

李相日監督らしい激情をはらんだ作品だが、本作は静かな激情である。

主人公の更紗は心に負った深い傷と事件の被害者によって被る問題を受け流しながら、本音を隠して生きている。
表面上は上手くいっていた婚約者との関係が、加害者である文を見かけてしまってからはどんどん歪んでいってしまう。

周りは2人を女児誘拐としてしか受け止められていないが、深い絆があり本質的には違うのだという事を丹念に時間をかけて描かれている。

ただ、こういう作品にありがちだが後に悲劇につながりそうなわかりやすい種があるのと、主人公があまりにも不用心で何も考えてないのかな?と感じられてしまうのが少し残念だった。途端に冷めてしまう…

やりきれない思いを抱えながらこれからも生きていく事が伺えるが、ラストの選択は晴れやかで心強い事が幸いである。


心に傷を負った更紗を演じた広瀬すず、更紗を優しく受け止める文を演じた松坂桃李とまた新たな一面を見させてもらったなという感じだったが、更紗の婚約者を演じた横浜流星はかなり新境地の横浜流星だった。

監督曰く、新しい役に挑戦したい彼の気持ちと、本作のキャスティングのタイミングがぴったりあったという事だったが、本作を経て若手俳優から一皮剥けていろんな役にチャレンジしていこうという気概が伺えた。



以下アフタートークメモ(ややシーンバレあり)

元々は4時間くらいあったが、削って2時間半になった。ドライブ・マイ・カーよりは短いです。

削られたシーンは文の大学シーン。
ポーの詩集やセリフは大学の授業で取り扱われていて、そこで文が感銘を受けた。

また、幻のラストカットとして、電車に乗った2人。シュークリームを食べてクリームがつけた更紗の口をあの頃のように拭ってあげるというシーンがあった。

変更されたラストカットは、あくまで受け取り手の自由ではあるが、やっぱり変態なんだ!と思わずに、2人は線のように対等で平行であることを意識していれた。

広瀬すずさんとは『怒り』で一緒して、またいつか一緒にやりたいなと見守っていてようやくこの更紗をお願いできるなと思った。
桃李くんと一緒のシーンで、桃李くんの演技がすごくてショックを受けていた。まだまだ伸び代がある。

文は松坂桃李くんしかいないでしょう?あの透明感を演じられるのは桃李くんしかいない。

横浜流星くんは原作のファンという事でお会いして、会った時に亮くんだ!と思った。良い意味で昭和のような泥臭さがある。礼儀正しいし。今までのキラキラした役から脱却してチャレンジしたい気持ちとキャスティングのタイミングがあった。
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