ぴろ

axandaxのぴろのネタバレレビュー・内容・結末

axandax(2020年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

 2020年SKIPシティ国際Dシネマ映画祭出品作品『axandax(アクサンダックス)』。学歴や職業、資格など、あらゆるものが「個人価値」として数値化された時代を舞台に、人生に挫折した男とカウンセラーが織りなす静謐な会話劇。

 以下、少し話が俗っぽくなるが、最近SNSで「非モテ男子必見」とか「恋愛のノウハウ教えます」「魅力的な人の特徴7選」とかいう文言を目にすることが多くて辟易としている(そういう文言が表示されるようなSNSの使い方を私がしている可能性は、とりあえず棚に上げておこう)。どうすればモテるのか、異性から「価値」を感じてもらえるのか、ということを気にしている人が世の中には多く、実際そういう広告はある程度効果的なのだろう。しかし、一人一人違って然るべき恋愛を軽々しく論じるのはいかがなものか。
 かく言う私も昔、異性からの評価を過剰に気にする時期があった。そのとき誰だったか、「モテる方法なんて考えずに、自分の好きなことに全力で取り組んでいれば、その姿は魅力的に見えるし、自然と彼女も出来るよ」とアドバイスしてくれた人がいた。私はその言葉に納得したし、今でもそれが真理だと思う。

 『axandax』が伝えたいことも、これと似たようなことなのではないだろうか。「個人価値」を上げることに執着した主人公ジンに対し、そんな生き方を棄てて芸術家として成功した兄と、人に寄り添うカウンセラーを志すナオミ。どちらが真に豊かな生き方なのか、観るものに問いかけてくる。

 ただ、ひとつ言っておかねばならないのは、主人公ジンは別に人からの評価を気にするだけの矮小な人物ではないということだ。彼は努力が出来る。周囲の期待に応えるために、兄を超えるために、長年コツコツと努力を重ね、一応世間的には大きな成功を収めている。歪んだコンプレックスこそあれど、私はこういう報われない努力人が好きである。自分自身と向き合い、最後に新たな1歩を踏み出せた彼の前途にエールを送りたい。
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