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笑いのカイブツのもちのレビュー・感想・評価

笑いのカイブツ(2023年製作の映画)
4.5
好きな事をやっているはずなのに苦しいっていうのは大なり小なり誰もがあると思うけど、それの究極、突き詰め過ぎて、削ぎ落とし過ぎて、潤滑油ゼロだからボロボロになっていく姿は、周りで見ていてもツライ。

大抵の人はその地獄から逃れようとするから、その道を諦めたり、もしくはコミュニケーションを学んでいく。

でもそれが出来ない人もいるし、そんな事せず突き詰めるのがカッコ良くも見えるし、でもそんなのかっこいいもんでも何でもないっていう気持ちも起こるし。

正しく生きるって難しいな…

ピンクや西寺が、その正しさを守ろうとしてくれていたのが本当にありがたかった。

原作途中まで読んで、苦し過ぎて、一旦映画観るまで読むのやめよう、と途中でやめた。
この世界を天音くんが生きて、大丈夫なんだろうか、本当に壊れちゃいそうで怖かった。

でも映画を観て、とにかく命を削ってツチヤを生きた天音くんはすごいと思ったけど、こうやって生き延びれた環境を作った監督、演者さん、スタッフ、全ての周りの人たちもすごいと思った。

特に、ピンクと西寺は、菅田くんと太賀くんしかあり得なかった。途中、観ているうちに役柄忘れて、泣き叫ぶ天音くんの肩に手を置く菅田くんで泣いた。フェンス越しに大きな声でツチヤと呼び続ける太賀くんで泣いた。

菅田くんが言ってた、もっと天音に気付いて欲しいっていう想いが、こうして形になったようで、本当に嬉しかった。

結局のところ、私には何かを突き詰めてまで他を切り捨てる勇気もないし、才能もセンスもないし、ただうまく回すように双方の調和を取るような眼鏡くんと同じ、ツチヤからしたら何もしていない人間かもしれない。むしろ才能ないなら、そういう人はそうしてたらいい。才能ある人はむしろそんなことにかまけて才能埋まらせるくらいなら、人間関係なんて不得意でいい。きっとお笑いのセンスに惚れたら、いつまでもそうやって奇人を甘やかすほうの人間に私もなりそう。

でも一般社会じゃそれじゃ通じない。ただの頭おかしい人間ってことになる。
お笑いって難しいよね。




ツチヤタカユキという人がこうして生きてきてくれた道がある事、そして、道は違っても同じような思いを持ちながら生きてきた監督や天音くんと重なった事、それがこうして映画となったことが、全て奇跡みたいに嬉しかった。


お笑い好きだったり、ラジオ好きだったり、もちろん俳優さんからも、いろんな角度からこの映画を観る人はいると思うけど、きっと、それぞれの見方で感情は違っても、何が動く作品ではあると思う。
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