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GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 4Kリマスター版のymdのレビュー・感想・評価

4.7
1995年の大傑作アニメーションが4Kリマスターで現代に蘇る興奮たるや。

公開から四半世紀以上経った今なお、大画面で体験しても全く劣化していないどころか、1995年の時点でこれほどまでのアニメーション技術のクオリティの高さと、啓示的で哲学的なメッセージを保有していたという事実を前に平伏してしまった。

映画の内容自体はオリジナル版の方で既に述べているのでここでは割愛するけれど、『AKIRA』を想起させる東京オリンピックの開催、エヴァ新劇場版の完結、マトリックス新作発表など、攻殻機動隊を取り巻くSF作品が注目を集めた2021年。

攻殻機動隊もこうした動きにシンクロしたように再起動したことには何かしら因縁めいたものを感じてしまったのは思い上がりか。

理由はどうあれこの傑作を大スクリーンで鑑賞できる機会はそうそうないわけだし、垂れ流しではなくリマスターと銘打っているだけのことはある、素晴らしい視聴体験となった。

4Kリマスターによって圧倒的な情報量を持っていた映像がさらに鮮明になっている。

近未来SF作品に対しての表現として適切かどうかはさておき、シーンひとつひとつが生き生きとした生命力の躍動を感じられるのである。

特に、草薙素子が海中から水面に浮上するあのシーンの繊細さと美しさは更に増しているように思えて静かな衝撃で半ば呆然としてしまった。

川井憲次のサウンドトラックも大音量のサラウンドで体感することで、よりその異質さが浮き彫りになる。

哲学的で難解なストーリーは何度観ても咀嚼しきれないのだけど、だからこそ何回も観てしまう。でも今回の4Kリマスターというリッチな体験をしてしまったら、今後も定期的にやってもらわないと物足りなくなりそう。ドルビーシネマも期待したいな。

ともあれ次は『イノセンス』のリマスター上映を一刻も早く実現してもらいたい。
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