HAYATO

ある男のHAYATOのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
3.8
2024年89本目
愛したはずの夫は全くの別人だった…。
今年もそろそろ日本アカデミー賞授賞式が迫ってきているということで、昨年度、最優秀作品賞を含む8部門を受賞した作品を鑑賞。
芥川賞作家・平野啓一郎原作の同名ベストセラー小説を、『蜜蜂と遠雷』の石川慶監督が映画化。
弁護士の城戸は、夫・大祐を事故で亡くした里枝から、夫の身元調査をして欲しいという奇妙な相談を受ける。というのも大祐の死後、彼が名前もわからない別人だったことが判明したという。「ある男」の正体を追う城戸は、別人として生きた男への複雑な思いを抱き始める。
城戸役の妻夫木聡さんのほか、安藤サクラさん、窪田正孝さん、清野菜名さん、眞島秀和さん、小籔千豊さん、柄本明さんらが出演。
引き込まれる俳優陣の熱演。
社会派とエンタメの両面を兼ね備えたミステリーであり、静かな切り口で真実を追い、複雑な余韻を残す内容だ。
避けられない家族の呪縛に囚われて重い十字架を背負って生きなければならない人がいるというこの世の不条理。
戸籍制度のある日本で「生き直す」ことは想像以上に困難であることを痛感し、名前や血筋に起因する差別に苦しむ登場人物の姿を見て胸が痛んだ。
オープニングとエンディングに登場するルネ・マグリットの絵画『複製禁止』は本作を象徴するような作品で、『複製禁止』を意識したかのような、反射した顔を映す演出がクライマックスに繋がる伏線になっているのがお見事だった。
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