エイプリル

さがすのエイプリルのネタバレレビュー・内容・結末

さがす(2022年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

視聴前は露悪的な展開をたくさん出す系の映画なのかなと思ってたのですが全然違いました。むしろ悪人らしい悪人は山内くらいしか出てきません。良い意味で思っていたものと違う、人間らしさがたくさん表現されている映画でした。

基本的なストーリーラインは楓が父親を探し、その父親は娘に秘密の犯罪行為に加担していた、というものになります。それだけ聞けば割とよくある話のように感じるのですが、この作品は「善人」と「悪人」を明確に分けず、一人の人間に両方の面を持たせ、細かい描写でそれを表現させることに全力を注いでいます。
主人公の楓は父親を探す健気な娘に見せかけて、父親のメールでいきなりヒステリーを起こしたりシスターに唾を吐いたりスクリーンにマジックで直書きするような、めちゃくちゃやべー面もいっぱい持っています。正直山内が出てくるまではこいつが一番クレイジーです。
山内は山内で最悪人間なのですが、最後に原田と一緒に飲み会しようとプレミアムモルツ買ってたシーンは、単に山内を悪逆な犯罪者という以上の意味を与えています。原田が山内を殺害するシーン、本来善であるはずの原田がビールを目にしても殺害を躊躇わない悪に堕ち、悪であるはずの山内が善の面としてプレミアムモルツを準備しているという、綺麗な善悪の役割逆転のシーンになっていて、めちゃくちゃ興奮しました。
警察に対しては即殺しようとしてた山内が原田に即座に反撃しなかったのは、痛み以上に仲間だと思っていた相手に裏切られたショックだったと考えると理解できるところでもありました。

ラストはラストでハッピーエンドと見せかけてもう一つ展開があるのすごい良かったです。本作にピンポンクラブという舞台背景を持ってきたの、「ネットという境界」を挟んで父娘が対峙するシーンを入れたかったからなんですね。うますぎる。
「さがす」というタイトルも単に蒸発した父を探すという意味ではなく、母が死んでから見えなくなった父の本心を探す、ということを示唆していたのも意外で良かったです。

殺人を描写する映画は星の数ほどあれど、殺人のシーンを丁寧に描写する映画はそんなに多くないので、その点も珍しくて新鮮でした。

総じて映画としての表現が上手い部分がものすごく多くて、展開のハードさの割にかなり楽しく視聴できました。
後、登場人物みんな悲しい思いをしたんですが、クラスメイトの少年だけ楓の胸見られたことで一人だけ得してて面白かったです。
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