りっく

土を喰らう十二ヵ月のりっくのレビュー・感想・評価

土を喰らう十二ヵ月(2022年製作の映画)
3.7
人生というのは生から死への時間の移ろいである。ただ、その時間の移ろいには、日が沈んでまた日が昇る一日、春夏秋冬と季節が移ろう一年という周期があり、だからこそ毎日を積み重ねることで、自分も含めた生きとし生けるものたちの僅かな変化や生の息吹を感じ取ることができる。

本作で画面に映る老いた沢田研二はもはや色気もなく、欲望を溜め込んで肥大化していた身体もない。ただただ毎日が来ること、旬を喰らうことに感謝する。そのひたすらに禁欲的で孤独な佇まいがいい。田舎にありがちなベタベタした近所付き合いの良し悪しもことさらに強調されず、昨今量産される美味しそうな食べ物を美味しそうに食べる映画とも一線を画している。

終盤にもっと人生観や死生観に踏み込んでもいいと思いつつ、土から芽生える作物をいただき、その土で自らの骨壺を作る行為にそれを託しているようにも感じる。
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