はぐれ

ベルファストのはぐれのレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
3.7
先行上映にて鑑賞。ケネス・ブラナーの幼少期の記憶が色濃く反映された本作。往年のハリウッド映画のように小綺麗なオープンセットの中だけで話が完結している作りが何でもリアリティーを追求しすぎる昨今の風潮に抗っているように思えて何とも心地いい。カメラ割りはもちろん映画的なんだけどセットやセリフ回しはあくまでも舞台演劇的と言うか。まあシェイクスピア映画の第一人者だからね。清々しいまでの意固地な矜持を感じた。
暴力的な描写が極力抑えられているのもパンデミック以降に映画製作に着手したという話を聞くと妙に納得出来る。そりゃこんなご時世に人が次々と死んじゃう映画なんて作りたくないし、観客も見たくはないよね。こんな悲惨な時代にはやっぱり人間はアステアのような究極のファンタジーを求めてしまうのよ🥺

カトリックとプロテスタント。北アイルランドとイングランド。まるで某国で起こっている紛争のように外から見ていると何が違うのか、何を争っているのか中々理解できないほどの些末な違いにイライラしながら衝突する両陣営。しかしそれが国全体に広がっている様には描かれずに局地的な紛争として扱われているのが面白い。銃を持った兵士が偉そうにしている世界線はいつの時代だって胸クソ悪いもんよね。

ベルファストに留まりたいと夫に訴えるバディの母親が「ここにいればあの子は街の全体で面倒を見てくれるのよ!」というセリフにグッときちゃった。
故郷に留まった者、旅立った者、そしてその争いで命を落とした者達へ捧げられた映画。
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