ゲル

世界は僕らに気づかないのゲルのレビュー・感想・評価

世界は僕らに気づかない(2022年製作の映画)
4.2
『フタリノセカイ』がなかなか良かったので、迷わず本作の鑑賞を決めた。
飯塚監督、こんなに素晴らしい作品を世に送り出してくれてありがとう!!
心から、観て良かった。
終盤の教会のシーン以降ずっと泣いていた。
じんわりと心が温かくなる幸せな涙。
そして、まさかもう一度幸せのシーンを見られるなんて!
『フタリノセカイ』でもあったように、将来を話し合うシーンはアドリブかなと思った。

生活感溢れる中に、ストレートな感情のぶつかり合いがふんだんに盛り込まれた繊細な作品。
現代の日本において、日々の暮らしの中でここまで感情を出すことは珍しくなった気がする。
純悟がまだ高校生だからとか子供扱いはせず、登場人物が年齢関係なくお互いを尊重して対等に会話している感じを受けた。
悪い意味でなく、純粋に、どこか日本っぽくない世界がスクリーンの中にある気がした。
それは、パートナーシップを認めてくれる思いやりのある優しい世界でもあった。
純悟が母親のレイナとぶつかるのは、単なる反抗期ではなく、精神年齢が上がりほぼレイナと同じ目線の高さで物事を見られるようになったからだと思う。
家庭環境の複雑さから、否応なく大人になることを強いられる気の毒な子供は多い。
彼らは総じて愛情に飢えている。

作品としては、全員キャラが立っていてそれぞれの個性がわかりやすく、楽しさもある。
だんだんシリアス成分多めになっていくが、前半のコメディー要素もおもしろくて笑えた。
高校生男子同士恋愛模様は、キラキラに脚色されておらずリアルだった。
このよう恋愛描写の作品にはほとんど出会ったことがないので新鮮だった。
キャラクターでは森下さんが優勝。
誰の知り合いにもいそうな単なる気弱そうな会社員、いや無職の男ではない。
あるシーンで「任せろ!」という台詞があって痺れた。
レイナは、森下さんの優しさの中にある頼りがいに心惹かれたのだなと感じた。
やるドラ『サンパギータ』からの知識で唯一知っているタガログ語が出てきてはっとした。

2023年に観た嘔吐シーンのある映画2本目。
ゲル

ゲル