小川勝広

アウシュヴィッツの生還者の小川勝広のレビュー・感想・評価

アウシュヴィッツの生還者(2021年製作の映画)
3.9
1カットが5秒以上!

作品中、1カットが5秒以上のカットが数カットあった。
絶滅危惧種だ。

バリー・レヴィンソンの手法そのものが絶滅危惧種ともいえる。

冒頭で、
影と彼女の存在、
白黒とカラーで、
正確に主人公の気持ちをメインプロットとして敷く、
そして、
その灯った火(葛藤、気持ち)を消さないように丁寧に繋いでいく。

サブプロットで、
兄、妻、息子、記者、
ナチス将校、コーチ、
プロモーター等、
緻密に演出していく。

ジャンとのサブプロットは、
シナリオにはおそらくあっただろう。

さすがに
バリー・レヴィンソンといえども、
高齢であっさりとした仕上がりを予想していた。
が、
良い意味で期待を裏切られたと同時に、
映画というものの、
シナリオ、芝居、演出、
カメラ、美術、音楽、
すべてが細かい緻密な正攻法のストロングスタイルも絶滅危惧種という事を再認識させらつつ魅せられた。

製作側が絶滅するか、
観客が絶滅するか、

本当に観たいものを、
本気で作れるか、

本当に観たいものに、
BETするか、

鶏でも卵でもない気がする。

原題は
『The Survivor』