マ

オッペンハイマーのマのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.7
窓に付いた水滴や繋いだ手 割れるグラスから(化学が殺人の為に発展している以上)直接世界の崩壊を視覚的に感じ続ける 怖過ぎるオッペンハイマー視点を映し続ける前半 から後半、実験のシーン以降から明確に 特に聴聞会にてオッペンハイマーを処理する過程から ゲイリー・オールドマン(トルーマン大統領)から しっかりと世界が全壊する。

ノーランは「メメント」における一番の恐怖、"1度 どこかで地獄の道を選択してしまった以上 いくら方向を変えようとしても詰んでいる"という地獄の理論(コレは自民党とかもしっかり当てはまると思うけど)をそのまま 現実に当てはめて作品を作ってしまった。真逆の性質 希望を持つ「テネット」はフィクションである以上 結局現実こそが「メメント」で、メメントの主人公の様に 何もかも随分前に詰んでしまっている。

ひたすらオッペンハイマーが糾弾され続ける後半には 常にその崩壊が映ってるからかビジョンは見えなくなり、代わりに自分が老いて許される未来(=周りの人々が自分らを許すための作業) リンゴを食べる教授(成しえなかった原爆開発以外の道)が映り込む。世界の終わりは冗談ですらなく 常にその場に置かれてる。ルイス・ストローズがオッペンハイマーを陥れる決め手となったアインシュタインとの会話は 彼のその表情を作った理由はまさに...

原爆投下の成功に歓喜するアメリカ人の足音を永遠に呪いとして流し続ける演出には痺れるけど怖すぎ。スパイク・リーを始めとした多くの人々が「直接的な描写」について話していたけど、普通に(超常現象的なビジョンでだけど)「原爆描写」も「被曝描写」も充分あるように思える、寧ろ映画全体が過剰なほどケレン味?に溢れてる。フローレンス・ピュー周辺の描写は逆に?そのケレン味的な要素が良くない方向に伸びてるとも取れなくない。

オッペンハイマー個人に集中しなければもっと酷く恐ろしい映画が作れたとは思うけど、個人を その行く末を見つめる事でもこの社会のダルさをしっかりと再確認できる。チームを集めて原爆を作り出していく過程は「インセプション」の準備パートの様なテンション(オーシャンズ11的?)で描かれるが 「戦後」パートがエンタメ性への妨害のように差し込まれ、罪(責任転嫁)として(殺人をする側の人々から)明確に指摘され続ける。エンタメな方向から地獄を語る映画は マイケル・ベイの「ペイン&ゲイン」の様に複雑な感情になる。


バーベンハイマーや「直接的な描写が無いこと」には怒るのに、安倍が推していた馬鹿げた「核共有」や、「ガザにも原爆を投下すればいい」と発言した米国の共和党員に対して「抗議をする必要は無い」と判断した岸田政権や、原爆を落とされて以降 結局「アメリカの犬」としてのムーブを続けてる日本政府に対して怒りを覚えなければ、何故 原爆投下を正当化する米国右翼の理論が「日本政府は自国の戦争犯罪に向き合って無いから」というモノなのか それらに意識が向かなきゃなんの意味も無い。
マ