●原爆の父が犯した大罪
科学者としての矜恃と罪悪感のせめぎあいに感情が揺さぶられ続ける。
▶感想
"連鎖反応"の可能性
ラストのアインシュタインとの対話。ここにこの映画のもつ意味が凝縮されてて、ゾッとする。
3時間とは思えないような、濃密で重厚で、衝撃的で、それでいて難解な作品だった。
ノーラン大好きだけど、バイアスを抜きにして、まっさらな気持ちで鑑賞。
随所にノーランらしさがありつつも、1つの伝記映画として、映画史に残る傑作だった。
天才科学者の内面の葛藤をひたすら写すことで、何とも言えない感情になる。そして、後半はひたすらその罪に苛まれる様子が描かれている。
キリアン・マーフィの顔が接写で何度も映るが、常に良心の呵責に揺れているのがわかる。アカデミーに相応しい名演だった。
あとは、原爆投下後の演説シーンがあまりに脳裏に残っている。
被害者のことを想像して、PTSD気味になるオッペンハイマーと戦争勝利を喜ぶ国民たちのコントラストがあまりに皮肉的だった。
そして、原爆を開発した後の地続きの世界が、今我々が生きている世界である、というのがあまりにも虚しいバッドエンドだった。
トリニティ実験の緊迫感、候補地の会議、法廷映画を想起する聴聞会、、、と
信じられないほど濃密で、惹きつけられるシーンはまだまだある。
反核でも、反戦でもなくこのように怖い映画に仕上げたことで、歴史を風化させない、大きな価値を持つ作品であると思う。
ノーランファンとして、この映画をIMAXで、日本で観れたことに感謝したい。まだまだ観ます。