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オッペンハイマーのshimakanのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.2
人事では済まされない映画だと思った。

原爆の父と呼ばれたロバート・オッペンハイマー(劇中ではオッピーとの愛称も)の伝記的物語。180分間、彼の栄枯盛衰を徹底的に描く。内容としてはとにかく濃密な会話劇。そして別次元の映像体験と音楽的衝撃。ファーストカットから不気味で神妙的なオッペンハイマーの脳内を表した映像、そして言葉で表せない音に圧倒された!!最後まで目が離せない緊張感が凄かった。

ここからねたばれは少し含みます。


オッペンハイマーとは、原爆の父と呼ばれていて、原子爆弾を作った張本人でもある人物で彼を描くに当たって、ノーラン監督は今回かなり試行錯誤を繰り返したはず。ストローズ少佐との対立であったり、トリニティ実験の描写であったり。中でも一番描写、内容がセンシティブな日本に対する原爆投下。これに関してはメディアにも散々言われてる通り、直接的な描写は無い。ワードは複数回登場するが写真、描写は一切ない。これはノーラン監督の配慮、もしくはあえて描写しないことで想像させる恐さを伝えようとしているのかと思った。映倫からR15+を指定されたのも話題になってたが、これはまさかの性描写によるもの。しっかり映るのだが個人的には顔の演技で伝えて切って欲しかった。それか多国が実践してるCG処理!!
トリニティ実験の場面では、口ずっと開けてて呆然。
アメリカ人達が成功を喜んでる場面は私達日本人からするととても複雑な心境になる。そして実際に日本に投下された後、ひたすら苦悩の日々を過ごすオッペンハイマーに凄く感情移入してしまう。
役者陣の演技も凄まじく、特に主演のキリアン・マーフィー。アカデミー賞も断然納得!!完全に役に入り込みまくってた。原子爆弾のフラッシュアウトの場面が印象深い。唖然とした表情と涙ぐんだ目が凄く心に刺さる。エミリー・ブラント、ロバート・ダウニー・Jr、フローレンス・ピュー、マット・デイモンなどベテラン勢集結で画面に釘付け。ラミ・マレックの目力が凄い。そして映像面は相変わらず。登場人物がいつも画面の中央にいるのもおそらく意図的。ホイテマさんの撮影テクニックにも圧倒。カラーとモノクロの使い分けも良い。IMAXで観たかった気持ち…!音響面が特に今回は素晴らしい。不穏なズ ズ ズ…みたいな効果音が耳に染み付く。サウンド設計の作り込みが本当に興味深い。スコアもドラマチック!

ラストの場面が序盤のある場面に繋がっていく演出は震えた。アインシュタインとの会話の時点でもうオッペンハイマーは自分の何かが欠如してしまったのを自覚していた。カメラがじっくりオッペンハイマーの顔を捉え、近づいていきながら、脳内映像がスクリーンを埋め尽くしていく瞬間は息を呑んだ。〃我々は破壊した。〃

間違いなく劇場で観るべきの一本。
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