烏丸メヰ

ヘル・レイザーの烏丸メヰのレビュー・感想・評価

ヘル・レイザー(2022年製作の映画)
2.2
『ヘル・レイザー』のリブート。
ストーリーラインからセノバイトまで全て刷新、現代ナイズされており、
「従来のヘルレイザーファン」と「初めてヘルレイザーを観る人(特に現代の若者)」とでかなり評価が分かれそうな印象。

昨日初代の4Kを観、女ピンヘッドに躊躇しかなかった本作を観る踏ん切りがついたのだが、端的に言ってしまうと、少なくとも私個人が抱いていた
「初代ヘルレイザーの好きだった所」
を全て現代向けにブラッシュアップしている。

最たる質感としては、現代の技術でやるとこれだけのものができますよ!という“これ見よがし感”が強く、初代が精一杯の特殊メイクで作っても全容や設定をぼかすことで保っていた、多くを語らない事で恐怖と愛着と想像力を掻き立てられる不穏な不気味感が一切無い。
起こること全てにこうでこうで、と理由が説明される為の謎解き要素、セノバイトの長台詞、箱にはライトノベル的な属性段階があり、話や舞台のスケールがでかい。
(この辺は現代の若者、新しい世代や新規ファンにはかなり見やすい改変だろう)
セノバイトとの「バトル要素」や、登場人物が多い割にほぼ感情移入できない奴らなので正直誰が死んでも何も思わないとかも個人的にはダメだった。

セノバイトに関しては、ルックに躊躇しかなかった女性姿のピンヘッドは意外と良かった(原作小説では両性体らしいし)。
が、初代リブートなのにセノバイトのメンツをいじったこと、現代の特殊メイク技術を“これ見よがし”しすぎて、生々しさが(セノバイトの元人間・SM開発済の成れの果てといった人間×ゴア×ビザールの生々しさではなく)「宇宙人寄り」みたいな感じだったのも私は好きじゃなかったかな。
そんなセノバイト達に、長台詞・初代を意識したぽいのに臨機応変すぎる折衷案提示・人間でもセノバイトを倒せると思わせるバトル要素……とか、正直初代リブートを語る中では全部やって欲しくなかった。


オールドファンに世界観や描写を愛されたものをリブート・リメイクするのは難しいのは本当に理解してる。
現代ならでは!の技術をこれ見よがしに使いブラッシュアップされすぎるのも嫌だし、けれど例えば昭和特撮の質感が良かった・愛されてたからといって、わざわざ現代技術があるのに昭和の限界に寄せて荒く見づらくした『シン・仮面ライダー』とかだと、
「昭和はあれを狙ってやってた技法じゃなくあれが限界だっただけで、そこを良さとされて再現されても見づらいだけ。映画の金払ってiPhone撮影の画質観るのかよ」
とも思う人も出てくるだろうし。

古くファンを獲得した「良さ」と、その良さを新規層や現代の人々も味わえるように現代向けに「刷新する」事って、限りなく同居が難しいんだろうな。
これらのバランスが良かったリブートって私個人は数個しか記憶にないので、上手くいってるオススメリブートあったら教えて下さい。
烏丸メヰ

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