A8

彷徨のA8のレビュー・感想・評価

彷徨(2021年製作の映画)
2.1
母国の内戦により自分の国籍がなくなってしまい、難民に。だがやってきた異国の地日本でビザも貰えず、不安な日々を20年ほど過ごしているある男性を密着したドキュメンタリー作品。

東京の河を眺めて「ここからの眺めが故郷に似ている」その一言で、彼の厳しいいまの現実から少し切り離すような様子と複雑な心情が垣間見れた。そのふとした包み隠さず自然と出る本音こそ、ドキュメンタリーの醍醐味であるなと切に感じた。

30分もないドキュメンタリー作品だが、彼の置かれている立場や心情、想いや社会の不満それらを自然な形で映し出し、うまく作品としてまとめられているのが印象的であった。

入国管理等の現実というのは当事者にとって非常に厳しい現実があるのだろう。日本は難民受け入れに対してあまり積極的ではない。そして今後もそれが変わるような兆しが見えないいま、彼らはなぜ日本にとどまるのだろう。「私は日本が好き、だけど日本は私のことを好いてくれない」その言葉に答えが詰まっている気がした。日本があまり受け入れない理由等、双方の意見や姿を比較した構成でまた、みたいなと思った。

橋から見える河の映像から始まり同じ場所の河で終わるこの作品。彼の、彼らの何も変わらず、ただ流されていくような日々、、それをまさに表したようであった。そして、彼らにいい変化が見えることを願いたい。
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