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リトル・パレスティナのmのネタバレレビュー・内容・結末

リトル・パレスティナ(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

シリアの首都ダマスカスの南部に位置する、難民キャンプ・ヤムルーク地区を捉えた2013〜2015年の記録。同地域では、潜伏する反体制派を追放するためのアサド政権による懲罰的な封鎖が半年以上にわたり続き、多くの住民が飢餓に苦しんだ。封鎖下で餓死した住民は合計181名になるという。本作でカメラを回す監督自身も同地域出身であり、随所に入る彼の詩的で、叙情的で、思慮深いナレーションは若い感性と怒りに満ち溢れたものだといえる。

時間が経つにつれ、状況はどんどん悪化していく。人々は雑草やサボテンを食べ始めるようになり、銃撃や爆撃は日常茶飯事となる。上空を飛ぶヘリコプターからは樽爆弾が投下され、街中は瓦礫の山と化す。そこにいるのは、高齢者の世話をする看護師となった監督の母親であり、「いとしのクレメンタイン」の替え歌を口ずさむ老人であり、ミルク不足でげっそりと痩せ細った赤ん坊である。

自分や家族の食事のために、荒れた地面に生えるバーベナの草を摘む少女の姿はあまりに痛々しかった。彼女は周囲に鳴り響く爆撃音に対して、口では「慣れてるよ」と笑い飛ばす。しかし、徐々に近づいて来る轟音は、彼女の表情から希望を摘み取っているようにも見えた。
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