MitsuhiroTani

ラーゲリより愛を込めてのMitsuhiroTaniのレビュー・感想・評価

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
4.7
私の祖母は天津で終戦を迎え、父とその弟の手を引きながら命懸けで大阪に帰って来た。祖父は軍人として残らねばならず、別れ際に“あいくち”(短刀)を祖母に渡し、何としても息子らを連れて帰れ、但し、万一の時には迷わず自害せよという趣旨のことを伝えたそうだ。
祖父はその後シベリアに送られたが、何年か経って帰国した。飢えと病で死にかけた北海道出身の友人を送り届けて、陸路で大阪に向かった。そのせいで祖父が戻るのが遅れたらしい。
戦後何十年も、祖父に届くタラバガニを父と私が茹でる側で、いつも祖母から聞かされたエピソードだ。
祖父は自らシベリアでの話を一切しなかったが、ドキュメンタリー番組を観たとき一度どんな感じだったか尋ねてみたことがあった。そんな綺麗ごとじゃないということをサラリと言った気がする。古いタイプの日本男子だった。
本作を観て、涙は出なかった。
シベリアの地は余りにも遠く、シベリア抑留は余りにも近い存在だからかな。
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