A8

カッコーの巣の上でのA8のレビュー・感想・評価

カッコーの巣の上で(1975年製作の映画)
4.0
人生というのは、誰もが自由に選択できるものではないのか。他人に侵されることは決して許されることではない。

60年代前半、アメリカの精神病棟が舞台のこの作品。異常ありとされ輸送されたジャックニコルソンは、この精神病棟に入院することになる。だが、彼は労働を逃れるためわざと(バレないように)この病院に入ったのである。そこで出会った患者たちと交流していくうちにこの世界(病院)の恐ろしさを知ることになる。人権とは、、価値観とは、、意思決定とは、、人生を生きる上でなくてはならない最低限の自由すら与えられないこの中でジャックニコルソンは、この病院の彼らに何を与えたのだろうか。希望か、単なる楽しみか、それとも新しい巣立ちの時か。

なんといってもジャックニコルソンの演技が素晴らしい。ネタバレにはなるが最後ロボトミー手術を受け廃人になっているシーン。親友となったチーフに抱き抱えられているのだが、今までの彼の陽気さとはまるで別人である。一目で彼はもうこの世には存在しないのだろうなと感じるのである。そして、この手術、そして人権侵害が当たり前のこの世界の恐ろしさを強く感じたのである。

この作品の主人公はジャックニコルソンかもしれないが、カッコーの巣の上(病院)で巣立っていった人物が一人いる。彼は確かに自分の力で巣立っていった、、一人の男の命と引き換えに彼の中で人生が蘇ったのだろう。彼のいく先、未来にはきっとジャックニコルソンがいるに違いない。

間違った正義を振り翳す看護婦、一方支配下に置かれまるで弱みを握られているような患者たち。これは果たして、望ましい関係と言えるのだろうか、、?この作品が答えを提示している。
そして、これはそこの世界だけで当てはまるモノではなく私たちが生きる世界でも当てはまると思う。この作品の中のジャックニコルソン(マグマーフィー)とチーフの関係とその最後の結果のように、私たちも、「カッコーの巣の上」とは、、そして、羽ばたく勇気と思考を与えてくれたような気がした。

生きるとは、、人生とは、、、人に侵されて言い訳がないのである。

ジャックニコルソンの惹きつける(実際にアップになり表情を台詞代わりのように表すシーンがある)姿に痛いほど想いが伝わる。それが皮肉にも最後恐ろしさも倍になってかえってくる。
彼の演技の、彼自体の偉大さを改めて知った。

冒頭の爽やかな朝日と広大な丘、海原で捕まえた大魚と笑顔で帰ってくる仲間たち、、。一方、、、いうまでもない。
最後のジャックの姿に2度とあの時の喜びや楽しさの感情を感じられないと思うと悔しさが芽生えてくる。
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