オンライン試写にて
1961年に実際に起こったナショナルギャラリーからゴヤの名画『ウェリントン伯爵』が盗まれた事件を映画化。
ナショナル・ギャラリーからこの作品を盗んだのは、60歳のケンプトン・バントン。長年連れ添った妻と優しい息子とニューカッスルの小さなアパートで年金暮らしをする、ごく普通のタクシー運転手だった。
バントンはBBCの公共料金の支払いをとにかく喋りまくり渋るような偏屈なお爺さんなのだが、映画を見進めて行くとそれだけの人ではないことがわかる。曲がったことが大嫌いな真っ直ぐな人なのだ。
絵の盗難の裁判が行われるのだが、その裁判もウィットに富んだジョークに溢れて笑いの絶えない裁判で、おおよそ裁判には思えない空気である。
とんでもない事件なのにもかかわらず、なぜこんな顛末になったのか、観ている側もなんとなく丸め込まれてしまう。
労働階級や社会制度の問題などをはらんだイギリスらしい作品であるが、観終わった後はほっこりしてしまう作品である。