まっさんさんの映画レビュー・感想・評価

まっさん

まっさん

映画(167)
ドラマ(0)
アニメ(0)

ミッシング(2024年製作の映画)

4.2

人間模様のリアリティがすごかった。

THE 虎舞竜のつぶやきやBlankの曲がラジオでオンエアされる件は憎たらしい皮肉が効いていて良かった。

いろんな立場と性質を持った人間おのおののドラマをバラン
>>続きを読む

マッドマックス(1979年製作の映画)

3.8

人心の荒廃した、というか、もはやどんなのかよくわからない世界だった。

荒野と荒れ狂った人々。ディストピア映画ならではの突飛なセリフ回し。

見どころが何かと聞かれてもよく分からないが、かといってただ
>>続きを読む

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)

4.1

物語自体は典型的だったけれど素朴な感傷があって良かった。

撮影方法も丁寧で、会話も良い意味で普通でリアリティに満ちていた。

本作は日本と台湾を股にかけており、今後東アジア・東南アジアとの共作が増え
>>続きを読む

異人たち(2023年製作の映画)

4.1

撮影技法に手作り感があって現実味を増すがゆえにかえって夢と現の境界線が危うくなった。

“Aftersun”も英国人の監督による作品だったが、この作品にも「イギリス的」な美的感覚が表れているような気が
>>続きを読む

プリシラ(2023年製作の映画)

3.6

物語として平板だった。エルヴィス・プレスリーと出会い、仲が深まり、結婚し、仲違いし、別れるのを順を追って見ていくだけのように感じた。

女性の見られる/求められることへの喜び(もちろん好意を寄せる相手
>>続きを読む

悪は存在しない(2023年製作の映画)

4.1

自然の描写が美しく、会話に独特の雰囲気と緊張感があった。

結末に不可解な行動が見られたが、あれはどのような意味だったのだろう。悪が存在しない世界には善も存在しない、ただ「自然」に従って出来事が生起す
>>続きを読む

カサブランカ(1942年製作の映画)

4.8

脚本がとにかく素晴らしかった。

第二次大戦中、モロッコのカサブランカでもドイツ軍とレジスタンス勢力の睨み合いが続くが、最終局面でリックの男気とルノーの仁義に一気にやられた。

恋愛映画の名作として見
>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

4.3

子供のころに北米に移住してしまい別々の人生を歩むことになった韓国人の男女が、ひとときの再会を果たす物語。

"Past Lives" という題に「前世」だけでなく「過ぎ去った日々」という意味もあると推
>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.3

連合国と枢軸国、共産主義陣営と資本主義陣営という国際政治の力学に巻き込まれたオッペンハイマーの伝記的映画だ。

政治に科学者を含めた人々が巻き込まれるさま、文明によって自然の力を引き出し自らを破壊する
>>続きを読む

四月になれば彼女は(2024年製作の映画)

4.0

男女が抱える愛の不能を情緒豊かに表現していた。

筋とシーンがやや飛び飛びになっていたところが印象を薄めているように感じた。

弥生と車椅子に座った春が経緯を打ち明ける場面など、心に残る画がいくつかあ
>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

4.3

家族の因果や愛の複雑さ、男女の規範の違いなどが浮き彫りになるいい作品だった。

特に夫が、かつてであれば女性に典型的であっただろうヒステリックで自傷的な行動を起こしていたのが印象的だった。家族が共同生
>>続きを読む

ストップ・メイキング・センス 4Kレストア(1984年製作の映画)

4.1

ここ二年くらいで、これまで関心のなかった音楽を聴くようにしてきた。その中で、長く愛されている音楽は何かしら好きなところが見つかるのに、なぜかこのトーキング・ヘッズだけはしっくりこなかった。

というこ
>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.1

他人に干渉したくもされたくもない、少し気難しい若者が、性別や世代を超えて自然に打ち解けていく様子を丁寧に映している。

映像はシャープだったけれど、物語はやや平板だった。日常を描く中にも、もっと琴線に
>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.2

独創性があり、皮肉が効いていて、とても面白かった。

女性に純潔が求められ夫の所有物とされていた時代を風刺しながら、時代的偏見を排す啓蒙的な医者の狂気を誇張的に表現していた。

思想的自由を獲得したベ
>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.2

いい意味で何がテーマだったのかが分かりにくい映画だった。印象的な部分はいくつもあったのに、それらがまとまりとして意味を持たないところがまさに現実だった。

演技と現実の人格、記憶と喪失の悲しみ、映画と
>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

3.9

好評を博しているそうだが、期待したほどではなかった。

冒頭の寄りや低い視点からのカットのメリハリや、終盤の戦闘シーンはカッコよかった。

だけど戦争における勇敢や恐怖の表現があからさまで、誇張してい
>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.3

言動、社交性、文化資本、実生活などすべてが現代の日本の一部をよく再現していて、日本の映画作家にもそれぞれの視点から見た「日本らしさ」を取り入れてほしいと思ってしまった。大げさに言えば、私たちは「日本」>>続きを読む

笑いのカイブツ(2023年製作の映画)

3.6

構図は斜めの線が多く、いい意味でいびつだった。岡山天音も松本穂香もリアルで自然な演技だった。

ただ、主人公がただのクズ人間として描かれていたのが残念だった。表面がクズなら、内面や他の要素によって埋め
>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

4.2

映像が美しくて、特に人物が寝転がっているところや壁にもたれかかっているところの画の均整がとれていた。色使いは効果的な対照をなしていたし、情景もよく表現していた。

物語るというより、男女の日常の中でか
>>続きを読む

市子(2023年製作の映画)

3.6

恋人が、突如失踪した市子を探し求め、彼女の知られざる過酷な半生を発見していく物語。

期待外れだった。市子を除いて人物が魅力的でなかった。私人逮捕が話題の昨今だが、長谷川や北の独りよがりな正義感が目障
>>続きを読む

正欲(2023年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

対物性愛という性的マイノリティ、積極的に不登校を選ぶ児童などを中心とした孤独と抑圧のドラマ。

現代的なテーマを優等生的に扱っている。ただし桐生と佐々木が共通のフェティシズムだけで繋がれたことや、諸橋
>>続きを読む

6才のボクが、大人になるまで。(2014年製作の映画)

4.4

アメリカ人の家族、友人関係、恋愛などが臨場感たっぷりに繰り広げられていた。普通の男の子が大学に入学するまでを映しているだけなのに、上手に切り取られた挿話や出来事の断片が、心に響く物語として紡がれていた>>続きを読む

生きる(1952年製作の映画)

4.2

人間には嫌なところも多いが、捨てたもんじゃないとも思った。終活という言葉が周知になった今、あらためてどのように人生を終えるかという美学についても考えさせられた。

ただ批評家から非常に高い評価を受けて
>>続きを読む

裏窓(1954年製作の映画)

4.8

このレビューはネタバレを含みます

まず、病室とその窓から眺める隣人たちの生活しか映していないのに、現代人の生活様式を様々な面から描写できていることに感動した。

そして、恋愛関係にあるジェフリーズとリザを映す映像と、隣人の生活を覗き見
>>続きを読む

アンダーカレント(2023年製作の映画)

3.8

夫に突然失踪された妻が、出会いや出来事を通して無意識に埋もれたトラウマと対面していく物語。

映像と主題が良かった。固定が多かったので偶にある動きが印象的になっていた。心の底に眠るトラウマとの対面、人
>>続きを読む

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

4.1

この映画は、20世紀初頭のアメリカ・オクラホマで白人の一群が、石油で富を得た先住民オーセージを殺人、搾取する様を描いている。

脚色が加わらない客観的な視点から白人たちの隠れた横暴をつまびらかにしてい
>>続きを読む

her/世界でひとつの彼女(2013年製作の映画)

4.2

OSとの恋愛がとてもヒューマンに感じただけに、かえって愛(特に性愛)にとって体の感覚がどれだけ重要かを再確認した。もちろん触覚がセックスを可能にしているのだが、性欲は不純に感じてしまうことがある。しか>>続きを読む

田舎司祭の日記(1950年製作の映画)

4.3

病弱で内向的な司祭が、みずからの不信心や村人たちとの交流に懊悩するさまを描いた作品。

宗教が身近でない時代に生まれた私からすると、主人公のような性質をもった人間は稀有だ。非常に寡黙でありながら純粋で
>>続きを読む

アニー・ホール(1977年製作の映画)

4.5

おもろい。しかもおしゃれ。

単純にせりふや話し方、アルヴィーの個性が面白かった。ふたりの関係を振り返る形式にもほどよい感傷があった。コメディなのに当然のように映像もかっこよかった。

文化的背景を多
>>続きを読む

麦秋(1951年製作の映画)

4.3

戦後間もない日本における家族のありようが細やかに描かれていた。

紀子があるとき結婚相手を直感して、その相手が家族の思惑からはずれていたことから、一同ひと波乱を迎える。しかし紀子は案外地に足がついてお
>>続きを読む

ブルーベルベット(1986年製作の映画)

4.2

幻想と現実の世界がまじりあう怪しさの中で、穏やかな愛と狂気とが絶妙な距離でさまよっているように感じた。この物語の救いは、現実が幻想に勝り、穏やかな愛が狂気よりうまくいったところだ。

フランクが狂人で
>>続きを読む

若者のすべて(1960年製作の映画)

4.2

良かった。

母が理性を欠き、何かにつけ動揺ばかりする教養のない女であるのは、腹が立ったし、イタリアや日本にいまだに残っている、古い家族のつながりの腫瘍のようなものを見せられた気分になった。その表象自
>>続きを読む

女は女である(1961年製作の映画)

4.1

哀しみと歓びの配合が絶妙で、心昂ぶるいい作品でした!個人的には前に見た『勝手にしやがれ』や『気狂いピエロ』よりも響いたし、腑に落ちる感覚がありました。ひょっとすると私の映画リテラシーが向上し、かつてよ>>続きを読む

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌(2013年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

60年代のニューヨークで、売れないフォークシンガーが知り合いに寄食する、その報われない、しみったれた日々の断片が綴られている。

過去を舞台にしながら、カットに生彩があり、適度に揺れ動く。それが私たち
>>続きを読む

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

3.7

カメラや人物の動きを意図的に操作したり、独特のユーモアを用いたりすることにより、シュールな世界観を演出している。色使いはパステルカラーが基調で、カットは相変わらずの様式美を持っていた。

しかし物語の
>>続きを読む

時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)

4.6

キューブリックのユーモアが光っていた。残忍な暴力が繰り返されるにもかかわらず、カメラの距離や音楽の調子、スローモーションなどの、よく計算された手法によって我々は笑いを催す。それは鑑賞者を暴力そのものか>>続きを読む