もとまち

ファンタジックチルドレンのもとまちのレビュー・感想・評価

ファンタジックチルドレン(2004年製作のアニメ)
4.2
月並みな言い方ではあるが、久々に「物語」を見たなぁという深い充足感が得られた。とても上質なファンタジーミステリー。牧歌的なキャラクターデザインからは想像もつかないほどのホラーチックで不穏なムード、謎に包まれたストーリー展開に1話から引き込まれ、貪るように全話を見終えてしまった。前半部は登場人物の行動やその目的が中々明かされず、思わせぶりなシーンばかりが続くのでかなりヤキモキさせられる。時系列があちこち前後する構成は分かりにくいし、各話の終わり方も何だか素っ気なく、わりと極端に視聴者を選ぶ作品である。序盤切りした視聴者が多くてもむべなるかな、という感じだ。しかし、「数百年に渡って蘇り続ける子供たちの存在」や「少女が何度も描きづつける不思議な絵」など、随所で提示される謎はどれも魅力的。「閻魔」のシンプルかつ不気味な存在感や、突如姿を現す奇妙な亡霊の姿も実に怖くて良い。山本二三による背景美術も半端ないクオリティで、世界観の奥行きをさらに深めていたと思う。何より、分厚い霧の中をひたすらに彷徨い歩くような前半部を乗り越え、物語の裏に隠された壮大な真実へと辿り着いた時の興奮は、何物にも代えがたい。正直ここでの評価ほど衝撃の真相とは思えなかったが、時空を超えた愛と罪と贖いと、その赦しが成就されるあの終盤部はマジで感動させられた。こういうロマンチックな話に弱い。そして、見事な人生讃歌として全てが収束する最終話の美しい余韻。「物語」とは、この瞬間を得るためにあるのだと思ってしまう。とはいえ、ネタバレになるので明言は避けるが、真相パートである○○○ア編の突っ込みどころの多さはかなり不満が残る。悲劇としても展開が陳腐だし、○○愛なのは良いが描き方が薄い。終盤の展開で巻き返してはいるが、この悲劇をもっと丁寧に練り込んでいたら、さらなる大傑作になり得ただろうにと少しもったいなく思う。
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