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T・Pぼんのmaのレビュー・感想・評価

T・Pぼん(2024年製作のアニメ)
4.0
暮らしも成績も平凡な並平凡は、ある日タイムパトロール隊員のリームと、彼女の仲間ブヨヨンに出会う。仕事中の彼女らを目撃した者は記憶を消されるルールだが、隊員のミスで凡の記憶は消えず、だったら存在ごと消すと言う。しかしある事情から消えることが許されない凡は、タイムパトロール隊員になりその仕事を手伝うことに。


これが40年近くも前に書かれた漫画だとはとても思えない。そして、ドラえもん感覚で観るとかなりショックを受けると思う。

冒頭から主人公の凡がベランダに身を乗り出した友人を助けようとしたが押してしまい、友人が落下。動かない友人と広がる血溜まり。

台風で大波にのまれていく家々や、魔女狩りで拷問を受け生気をなくしていく罪なき人。戦地にあふれる虫のたかった遺体。

そういったものがありのままに描かれる。SFなんかじゃない史実をまっすぐに見つめながら、藤子先生の「すこし・ふしぎ」がやさしく光るのが本作。

タイムパトロール隊員の仕事は過去の世界で不運な死を遂げた人を救うこと。ただし、歴史を変えることは重大な規律違反であるから、救えるのは歴史に関係がない人だけ。

ひとりひとりの命はこんなにも尊いのに、歴史に何ら関係がないと判断されるのはなかなか切ない。この人が生かされてこれから誰かを救い、その人が大発明をするかもしれない、そういう未来まで全部見て、「そういうことは起こらない」「歴史に関係がない」と判断される。切ないが、そこで途絶えるはずだった命が救われ、その周りの人々とともに生きる喜びがほんの少し続くなら、それはきっととても幸せなことで、それを守るためにタイムパトロールは存在している。

突然の幕引きに寂しさを感じずにはいられなかったが、シーズン2などは制作されるのだろうか。気長に待ちたい。
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