めしいらず

小公女セーラのめしいらずのレビュー・感想・評価

小公女セーラ(1985年製作のアニメ)
3.8
テレビ放映当時からの二度目であるけれどやはり目を離せない面白さ。相手の境遇によって態度を豹変させる学院長ミンチンと、己を脅やかす存在に徹底的に牙を剝く同級生ラビニアの人間像が人の奥底にある忌まわしい感情を見せつけられるようで迫真性がある。二人は傷ついたセーラであるのに更に(文字通りに)足蹴にして止まない。第39話、アーメンガードになぜセーラを憎むのか問われたラビニアが「セーラが落ち目になったのに、ちっともこたえたフリを見せなからよ。それが許せないのよ」と返したのがこの物語の最重要ポイントだろう。二人は何があろうとなかろうといつでも毅然として高潔であるセーラの向こうに、コンプレックスに凝り固まった自分の品性を見つけて畏怖しているのだ。どうしても屈服させてやりたい。だからいじめいびりが斯様に苛烈になってしまった。その一方でセーラの友人であり続けたアーメンガードとロッティはどうだろうか。私の目に二人は、自分たちが関わることでセーラが更に迫害されているのを何度も目の当たりにしているのに、そのことに対して彼女らがあまりにも無自覚で無頓着にも見える。そんな風に考えてしまうのは一視聴者の私の中にあるコンプレックスをもセーラが炙り出した証拠なのである。絶対にブレない彼女は対峙する人の真の人間性を鏡のように映し出してしまうのだ。だから彼女の運命の行方に引き込まれてしまう。これまでは優しい母親像を演じてきた中西妙子と、芯の通った少女像を演じてきた山田栄子両氏の見事な悪役ぶり。二人の声優キャリアの中でも特に印象に残る仕事になったのではないだろうかと勝手に想像してしまった。
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