都部

俺の妹がこんなに可愛いわけがない。の都部のレビュー・感想・評価

3.1
家族愛の再構築に収斂する前期と打って代わり、作品から言葉を借りれば近親相姦上等の兄妹間による恋情の結実に収束する本作は、前期で扱われた人物や関係に焦点を絞る前半部とヒロインズの関係処理に追われる後半により構成されており一貫性があるように思える。

語り部である京介と副次的な女性達の関係の結実や破綻を通して、妹 桐乃に対する気持ちを克明にしていく一連の流れは作品が想定する結末に実直であり、一部のキャラクターに対する個人的なファン感情を鑑みると文句の一つも言いたくなるが作品としては締りがあったのは事実だろう。得てしてヒロインレースが齎す作劇上の歪みはどうしても生じるものであるし、その上で『近親者同士で恋愛するのは気持ち悪い──が、自分達はそうする』という結論に納得するだけの話ではあった。

それ故に日和を感じさせる期間限定の関係の結実というオチは『はぁ!?』と大きな怒りを呼び起こすもので、それまでに袖にした女性陣との関係性の温い継続も加味して、結局のところ それに伴う異端と作品が付き合いきれていないように思えたのが至極残念だった。

関係の結実に際して最後の最後で幼馴染と桐乃は衝突するわけだが、近親の恋愛という禁忌の障壁としては弱々しく感じるし、世間一般の倫理を説く存在として物語序盤では父親が存在していたのだから乗り越えるべきは父親も含めてではないのか───つまり異端な関係が人間関係や社会的立場を無茶苦茶にするという代償については想像や仮定として語られるばかりで、実際はそれに期限を設け状況を限定することでその代償を無視して甘い汁を啜っているだけになっている。

近親間の恋愛の倫理的社会的問題を壁として配置した割に、その責任から逃避している──便宜上として幼馴染を配置しているがそれも便宜上のそれに過ぎない)──のは釈然としない後味を残すそれだった。
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