かずぽん

大奥のかずぽんのレビュー・感想・評価

大奥(2023年製作のドラマ)
4.3
【謎の疫病「赤面疱瘡(あかづらほうそう)」で男女逆転の世界を描く】

よしながふみの漫画『大奥』が原作。私はNHK総合の「ドラマ10」にて視聴。
シーズン1は、2023年1月10日~3月14日まで。シーズン2は、2023年10月3日~12月12日まで放送された。因みに、2010年に二宮和也と柴咲コウのW主演で映画化されたものと同じ原作である。

徳川三代将軍家光の時代に、関東のとある山村で熊に襲われ致命傷を負った少年を発端とする奇病が流行し始めた。それは「赤面疱瘡」と呼ばれ若い男だけに感染する。致死率80%で感染力も強く、100年も経たない間に日本の男子人口は女子の1/4にまで減少してしまった。
当然、労働力は女子頼みになり、男子は子種を持つ大切な存在として宝物のように扱われた。
将軍職においても三代目以降は女が継ぐこととなり、「大奥」は俗に美男3000人と言われる女人禁制の聖域となったのである。
物語は八代将軍吉宗の時代を起点として語られ、それ以前の出来事は『没日録』によって語られることになる。

「赤面疱瘡」とは、原作者よしながふみさんが創作した架空の病となっているが、現代の「天然痘」によく似ている。今で言うワクチン接種に漕ぎ着けるまでが描写されるなど興味深い部分もあった。
まず、八代将軍吉宗に扮するのは冨永愛で、幕府財政の立て直しのために大奥の華美なる衣装を節約するシーンもあった。とにかく冨永愛の吉宗は、立ち姿の美しさ、凛々しさ等、カッコいいの一言に集約される。
「大奥」を描いた物語の多くは、如何に将軍の寵愛を受けるか、如何にして世継ぎ(次の将軍)の母となるかという、大奥で生きる女たちの駆け引きやドロドロした愛憎の物語になりがちではあるけれど、本作では将軍の側の苦悩も描かれていた。

私見ではあるけれど、壮大な物語の中から特に印象的だった人物について書いておきたい。
三代家光(堀田真由)と福士蒼汰扮する万里小路有功(まりのこうじありこと)の回は胸キュンが多かった(笑)。万里小路という名前からも分かる様に、彼は公家の出身だった。出家していたところを春日局(斉藤由貴)によって還俗させられ、後に「お万の方」となる人物。穏やかな性格で、京ことばが嫋やか(たおやか)な印象。福士蒼汰の人気によるものと思うが、シーズン2の幕末においても天璋院として再登場。
九代将軍家重役は三浦透子。言語障害と排尿障害(お漏らし)を持つ難しい役を好演。知能は高く将棋が得意で政(まつりごと)の能力にも長けていたので、父・吉宗から期待されたが、周囲の悪意によって潰されてしまう。
仲里依紗が演じた五代綱吉は壮絶だった。世継ぎを産むというのが将軍の最大使命なので、毎晩のように大奥の美男子と床を共にするが子宝に恵まれず、しかし大奥の連中からは「好き者」呼ばわりされて自分の運命を嘆く。
シーズン2の医療篇では鈴木杏が平賀源内を演じ、蘭学者・青沼(村雨辰剛)と共に赤面疱瘡のワクチン接種の研究をする。
その他、登場人物やそれぞれのエピソードも多く、見応えのあるドラマだった。これは一見の価値ありと思うので、強力におススメ。
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