Fitzcarraldo

HERE AND NOW~家族のカタチ~のFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

HERE AND NOW~家族のカタチ~(2018年製作のドラマ)
4.5
"American Beauty"(1999)でアカデミー賞の脚本賞を受賞したAlan Ballの製作総指揮のもと、多様な現代に生きるリアルな人々のアイデンティティを模索する物語を、自身もゲイだとカミングアウトしたアラン・ボールの脚本と、監督も行った名作連発のHBOのドラマシリーズ。

心温まる家族のファミリードラマかと思いきや…いやいや結婚生活、親子問題、人種差別、いじめ、宗教、売春、不倫、LGBTなど全てぶっ込んだ闇鍋ドラマ!!

次から次へと、うまいこと問題が重なったり移行したりして、見事にパズルのようにピタッとはまっていく素晴らしい脚本。よくもまぁ、とっ散らかんと体裁を整えたものだ。

1111の謎が出てきたり、各々の家族が抱える内面の問題を、うまくミステリーに仕立てて興味を持続させている。物凄く今っぽい。


#1

ティム・ロビンスの実の娘である、ちょっとブサイクなクリステンと、養子でゲイのラモン。

○クリステンの部屋
ラモンとクリステンがマリファナを吸いながら雑談。

クリステン
「Grindrで引っかけた?GROWLrで?BristlrかSCRUFF?」

ラモン
「アプリじゃない」

クリステン
「そんなことある?」

アプリで出会うのが当たり前のミレニアル世代からしたら、リアルで出会うことの方が不思議なのか…やはりこの感覚についていけない時点で、オジサン確定だな。

しかも、こんなに出会い系のアプリあるんだ…
日本にも多種多様なのあるから、そりゃそうか…



#2

○家族計画クリニック
クリステンの性病検査に付きそう黒人の養子で白人の旦那がいるアシュリー。

アシュリー
「バカたちが集まってるわ」

クリステン
「オルタナ右翼に殺される?」

アシュリー
「その可能性はあるわね。無視して通り抜けて」

中絶反対のプラカードを持った人々が通路に沿って並ぶ。

アシュリー
「いいから無視して」

赤ちゃんの人形を十字架に磔にしてる男
「命に感謝を!」

アシュリー
「産みの母は私を産んで死んだ!」

クリステン
「無視しなきゃ」

赤ちゃんの人形を磔にしてる男
「君はまだ子供だ!子供が出産なんて!」

クリステン
「クラミジアなの!このアホ!」

ほんとにこういう奴らはいるんだろうね…アメリカには…恐ろしいな。


診断を終え出てくるアシュリーとクリステン。

クリステン
「トリコモナス症かクラミジアらしい。とにかく検査結果を待てって、処方薬が違うから」

アシュリー
「妊娠よりマシ」

クリステン
「でも世界一キモいビッチだよ」

アシュリー
「世界一じゃないわ」

クリステン
「恥だね」

赤ちゃんの人形を磔にしてる男
「そうとも!何人の胎児を殺した?」

クリステン
「30人!」

赤ちゃんの人形を磔にしてる男
「ふざけてるのか?殺された胎児の身体は売り捌かれるんだぞ!」

アシュリー
「それはデマよ」

赤ちゃんの人形を磔にしてる男
「黒人の子供は数に入ってない」

クリステン
「ヘイ!ファッキンユー!」

アシュリー
「クリステン!車に乗りなさい!早く!」

赤ちゃんの人形を磔にしてる男
「クリステンか?!アバズレめ!」

クリステンは股間を蹴飛ばす!



#3

○講演会場
ティムロビンス演じるグレッグと、講演同席者のトマス。

グレッグ
「不安と怒りこそ、今の社会に対する適切な反応だ。君は現状を受け入れろと言うのか?激怒することは、いつから罪になったんだ?』

トマス
「あなたは私と同じ意見を唯一の著書で述べてる」

グレッグ
「"全体主義を楽観視しろ"とは述べてない」

トマス
「"この困難な時代にも喜びを選ぶべきだ。自らと、愛するものと、世界のために…"あなたの言葉だ。30年前は今より楽な時代だった?」

グレッグ
「30年前、真実は真実だった。だが当時と違い今や世界はめちゃくちゃだ。未来へ向かってクソが垂れ流されてる。滅茶苦茶にしたのは我々や賢い君たちだ。人間に客観的な 英知があるなんて幻想だ」

トマス
「自然の働きで…」

グレッグ
「自然は我々の知識など気に留めちゃいない。自然には我々など必要ないんだ。鹿が森で糞をした時、人が見てようが見てまいが意味はない。ただクソをするだけだ!」




○ダーツバー
ベトナム人の養子であるデューク、アシュリーの旦那である白人のマルコム、マウンテンバイクの仲間たちと…

デューク
「禁欲主義なんだ…」

A
「セックスしないの?」

マルコム
「言っとくが男性ホルモンはセックスで激減したりしない」

デューク
「ホルモンの節約じゃない。射精よりも有意義なことに魂をつぎ込んでる。本能の導きに従ってね…」

B
「どうやるんだ?」

デューク
「自制してる。いつもだ」




#4

○プール

宣伝用動画の自撮りをしてるデューク。
鼻くそを指摘してあげたおばちゃん。

デューク
「見栄のためじゃない。仕事です」

おばちゃん
「何度かやれば成功するわ」

デューク
「知ってる…」

おばちゃん
「親切心で…」

デューク
「いや、結構」

おばちゃん
「エゴが強いのね…プライドは失敗の元よ」

デューク
「プライドは健全な感情だ。エゴとは違う。自尊心や自信と同じだ。自己実現に繋がる。失敗じゃなくね!」

この言い草…




グレッグと助手のマイケルの雑談

グレッグ
「なぜ恋人にプロポーズしない?」

助手
「ただの大げさな意思表示です」

グレッグ
「文明が滅びゆく中で大げさな意思表示は重要だ」

助手
「重要なのは愛です慣例化した概念じゃない」

グレッグ
「結婚はもっと複雑だ。二元性生命体だよ。命を持ち、呼吸して、変化して、育つ…人類の高尚な理想の象徴だ。忠誠心、貞節、勇気。結婚はボートに似てる。二人で乗る時もあれば君が落ち妻が助ける時もある。オールで殴られる時も…時には一方が強く漕ぎすぎて、グルグル回ることも」



○ラモンの部屋
ラモンと彼氏のヘンリー

ラモン
「君は怖がらないね」

ヘンリー
「誰でも怖がる。人間の本能だよ。だからジャングルでも生き延びた。怖がらない方が怖い」

ラモン
「何言ってる、常に怖がる必要はない」

ヘンリー
「君みたいな人間は…」

ラモン
「待って、俺みたいなって?」

ヘンリー
「ITオタクだ」

ラモン
「ファックユー?!オレは違う」

ヘンリー
「そうか?」

ラモン
「それがオレの全てじゃない」

ヘンリー
「オレたちが進化したのはPCやロボットのお陰だと思ってるだろ?でも外に出て森へ行けば何も変わってない。野蛮人だよ。ゲームの恐怖から逃げる手段にすぎない」

ラモン
「ウソつけ!」

ヘンリー
「図星だから怒ってる」




精神科医のファリドとイスラム教の嫁と、イスラム教の白人指導者の家に招かれて…

ファリド
「モスクへは行かない。ムスリムは好きじゃない」

指導者
「イスラム教は人間の憎しみにも寛容だ。我々も寛容に認め合おう。考えを聞かせて」

ファリド
「ムスリムは自尊心が高い」

指導者
「それが魅力だ」


「みんなそうよね」

ファリド
「被害者意識が強く異教徒を責めるが、自分たちの背徳行為には無責任だ」

指導者
「イスラムの教えは慈愛だ。残虐行為とは違う」

ファリド
「テロリストやISISの話じゃない。イスラム法の名誉殺人や女性に酸を浴びせることだ」

指導者
「同感だよ」

ファリド
「子供にアシュラ(鞭打ち)を強いる」

指導者
「コミュニティで解決すべき問題だ。ぜひ力を…」

ファリド
「私は断る…私は宗教よりも道理に従う」

指導者
「どちらも目的は同じだ。真理への道だよ」

ファリド
「そうは思わない。宗教は不合理だ。完全にね!弱者の心を操るための道具だ!歴史が証明してる。家族や生活や国を破壊した!」

(宗教に対しての深い洞察…というか真実…これはタブーじゃないの?!よくぞ台詞にした)

指導者
「それは宗教ではなく過激派による悲劇だ…イラン革命を経験したそうだね?私も詳しく勉強したよ。怖かっただろう…」

ファリド
「君と違い私は経験した………なぜわかる?何様だ?君のような白人が私にイスラム教を説いている。私に!イスラム教のせいで私の目の前で血が流れた!なのに偉そうに…」

指導者
「私は経典を信じる白人だが、信仰は本物だ」

ファリド
「宗教ならくれてやる。私の文化も惜しくはない。全て君のものだ!神を信じろ!空想の不実な神に一生ついていけばいい」




○ラモンの部屋。

グレッグ
「姪っ子の誕生日なんだぞ」

ラモン
「どうせ大人になれば覚えてない」

グレッグ
「だが今日は覚えてる。それが大事だ」



#5

○ママ友の家
アシュリー家族、黒人の家へ招かれて…

ママ友
「この町のことを本で読んでショックなの」

ママ友の夫(コーリー)
「その話はよせ」

ママ友
「ポートランドは白人の楽園として造られたのよね?」

マルコム
「白人の楽園?」

ママ友
「1926年まで黒人が来るのは違法だった。すれ違う白人は皆"ポートランドは天国ね"と。有色人種はほとんど見かけない」

ママ友の夫
「見かける度に連絡が来る」

マルコム
「知ってた?」

アシュリー
「No…全然知らなかったわ」

ママ友の夫
「100年近く前の話だ。今は違う」

ママ友
「10代の子は学校に黒人の人形を吊り下げてる」

マルコム
「クリステンの学校だ」

ママ友
「クリステン?」

マルコム
「アシュリーの妹」

ママ友
「妹さん、大丈夫?KKKまがいのクソ共がいるのに…失礼」

マルコム
「妹は白人だから」

ママ友
「そうなの?」

マルコム
「アシュリーは養子だ」

ママ友
「両親は白人なのね…納得」


○車
マルコムが娘をチャイルドシートに乗せている。

マルコム
「また、あの二人と食事しよう」

アシュリー
「二人とも批判的では?」

マルコム
「そうは感じなかった…」

車に乗り込む二人。

マルコム
「パイを食べてる間あまり話さなかったね?」

アシュリー
「なぜ養子の件を話したの?」

マルコム
「事実だから」

アシュリー
「なんで、あえて説明したわけ?」

マルコム
「説明はしてない。別に秘密じゃないだろ?!正真正銘、君の親だし」

アシュリー
「白人の親よ」

マルコム
「だから何?僕の両親も白人だ。それが事実だろ?!……何?…どうしたの?」

無言のアシュリー。




○グレッグとオードリーの寝室
グレッグと、旦那の風俗通いを知ってしまった奥さん。

グレッグ
「南極半島を通って行けるツアーがある。ペンギンに餌やりもできる。氷が解け始めてるから行くなら今だ!どう思う?」

オードリー
「高そう…毎月900ドル引き出すのをやめないと…」

グレッグ
「何の話だ?」

オードリー
「預金の話よ。私たちの口座から毎回300ドル、月に3回は引き出してる…用途は?」

グレッグ
「手持ちがなくて引き出しただけだ」

オードリー
「そう?…200でもなく…500でもない。毎回決まって300ドルよ。特別な用途があるのでは?」

グレッグ
「……(座り込む)すまなかった」

オードリー
「信じられない。わぉ!私が間違ってたわ。バカみたいだけど、嘘をつくかと思ってた。適当な作り話で誤魔化すかと…」

グレッグ
「君に嘘はつかない」

オードリー
「…(笑)」

グレッグ
「君が思ってるようなことではないんだ。いいかい、これは…」

オードリー
「娼婦よ!グレッグ!」

グレッグ
「いや、娼婦とは違う…法科大学院に行く金を稼いでる子だった」

オードリー
「おーファック!そんなの娼婦の常套句でしょ?!"ヘロインをキメるお金が欲しい"とでも言うと思った?(サイドテーブルからコックスリングを手に取る)その女に使ったのね?」

グレッグ
「違う。僕は買ってないし」

オードリー
「私にだと言ってた」

グレッグ
「使うつもりはなかったし車に入れてたのも忘れてた。彼女が、くれたんだ」

オードリー
「娼婦がくれたコックスリングを私にくれたわけ?(投げつける)…(コピーした紙をグレッグに渡す)検索履歴も消さずにいるなんて!どこまでマヌケなの?特に面白かった文章がある。確か、あれは…(老眼鏡を手に取り)見せて。(グレッグからコピーした紙を奪う)…読んでくれる?」

グレッグ
「嫌だよ」

強引にグレッグの手に持たせる奥方。

オードリー
「読んで!」

グレッグ
「これを?……"昨日はありがとう。僕は忘れてたよ。誰かを求める気持ちがどんなものか"…これを書いた時は…深い意味はない。」

オードリー
「ここ何年もの間にあなたが書いた文章で一番の傑作だわ」




#6


起業して大成功して超稼いでいるオードリーの同級生。昔、オードリーを好きだったらしい…その同級生に出資を募るためにプレゼンに来たオードリー。

オードリー
「例えば…児童の大半が白人のロックランド小学校では、近年、公民権運動の歴史を教え始めた。でも、それが裏目に出たの。白人の子が、黒人の子をバスの後方へ追いやった」

同級生
「歴史の再現か」

オードリー
「その後、黒人の子たちは後部座席を縄張りにして、権力や支配や復讐の場として使い始めた。私が、その子たちと話をしたら、みな発端は忘れて争いだけが続いてた。だから互いの立場に立って物事を見ることを教えたの」

同級生
「素晴らしい!出資しよう!」

同級生、出資決めるの早すぎる…

しかし、この台詞のようなことが、そこかしこで実際に起こってるんだろうなぁ…誰かさんのせいで分断が進んでしまったからなぁ…。




○幼稚園
アシュリーの娘ヘイリーが通う私立の幼稚園に迎えに来る。落ち込んでるヘイリー。

アシュリー
「ねえ、何かあったの?話したくない?」

ヘイリー
「私って"ウンチ"なの?」

アシュリー
「そう呼ばれた?」

ヘイリー
「クロエが、そう言った」

アシュリー
「どうして?」

ヘイリー
「わたしが茶色いから」

アシュリー
「そんな…」

ヘイリー
「ママもウンチだよ」

アシュリー
「クロエは、どの子?」

指を指すヘイリー。

アシュリー
「座って。いい?ママを見て。ウンチじゃないわ。オッケー?ママが戻るまでに支度して。いい子ね」

アシュリー、クロエのママの元へ。

アシュリー
「クロエのママ?ヘイリーのママよ」

クロエのママ
「ヘイリー?ああ、あの子ね。ってことはマルコムの奥さんね?よろしく。バベットよ」

アシュリー
「二人で話せます?」

バベット
「ええ、もちろん。(クロエに向かって)少し遊んでてくれる?すぐ終わるからね…(アシュリーに向かって)何か?」

アシュリー
「ヘイリーが落ち込んでるの。茶色だからクロエに"ウンチ"って呼ばれて…」

バベット
「やだ…」

アシュリー
「だからクロエと話して…」

バベット
「そんなこと言うはずない」

アシュリー
「Excuse me」

バベット
「あの子は絶対にそんなこと言わないわ。きっと他の子が言ったのね…可哀想に」

アシュリー
「でもヘイリーは嘘をついたりしないし、"ウンチ"って言葉も使わない」

バベット
「クロエだってそんな言葉は使わないわ。それに私の義理の兄はインド人だし…」

アシュリー
「それが?」

バベット
「"ウンチ"なんてあの子が言うはずない」

アシュリー
「気持ちはわかるわ。肌の色の話は居心地が悪いわよね」

バベット
「"肌の色"だなんて…本気で言ってるの?」

アシュリー
「ええ」

バベット
「マルコムの奥さん、いい?聞いて…子供には肌の色なんてないと教えなきゃ。でしょ?同じ人間よ…それに先月、ヘイリーはクロエを"人参頭"って呼んだ。でも、あなたやご主人に詰め寄ったりしてない。"ウンチ"のことみたいに…クロエ!もう帰るわよ。お気の毒ね(アシュリーにハグする)可哀想に…(ハグをやめて)ひどいわ」

ここのアシュリーの顔がヤバイ!!苦虫かみつぶした最高の表情を見せてくれる。

アシュリー
「ええ…本当に」

バベット
「また明日(クロエと去る)」



○路上

グレッグの助手マイケルが、プロポーズが成功した報告をチャリンコに乗りながら、グレッグに電話で話す。

マイケル
「実は頼みが…」

と、駐車していた車のドアが突然開き、マイケルはドアに突っ込んで吹っ飛ばされる。
これで、この回END…

…オレの友人が246号で全く同じ被害にあって、前歯二本折る大怪我をした。女性なのに…これを聞いてからというもの、駐停車してる車が恐ろしくて恐ろしくて…ドライバーの人もね後方確認を怠るからね。このシーンを見て、改めて気を引き締める。

ここでズバッと終わるのとか最高にいいねぇと思ってたら、エンドクレジット…

Directed by LISA CHOLODENKO

おぉ…ビックリ!
"The Kids Are All Right" (2010)の監督だった。
なるほど。納得。


Written by WES TAYLOR
この人は"Lovecraft Country"(2020)の脚本も担当してるようなので、大いに期待できる。




#7

マイケル死んでしまった…
この死に方だけは嫌だ!



アジア系のデューク、お腹が弱くてトイレに籠もる…血便は出てないのか?と母親に心配される。禁欲主義でロジックをこねくり回す面倒くささと、胃腸弱くて血便って、オレとそっくりじゃねぇか…




#8


○実家

グレッグとアシュリーとクリステンで夕食。

グレッグ
「人間関係は打算的すぎる。相手に見返りを求めるのは西洋的な発想だ。この料理は私の愛の印だ。貸し借りはしない」

アシュリー
「借りとは思ってない」

グレッグ
「その代わり、今日あったことを話して」

アシュリー
「…それがね…今日は、アメリカの未来に危機感を抱いた。黒人人権運動(BLM)の貼り紙を断ったら、白人に罵倒された」

クリステン
「この国は終わりだね」

グレッグ
「どうかな…」

アシュリー
「娘の将来が心配で眠れない」

クリステン
「私は絶対に子供は産まないよ。こんな世界を見せたくない」

グレッグ
「だが今までも…世界は常に滅亡の危機を乗り越えてきた。安全なんて幻想だ。例えば私の両親は第二次世界大戦を生き延びた。だが8000万人が死んだ。私もベトナム戦争を経験した。世界が破滅するかと思ったよ。街では暴動が起き、政府は嘘を」

クリステン
「それとは違う。いまは史上最悪だよ」

グレッグ
「かもな…」

アシュリー
「大学の講義とは違う」

グレッグ
「もちろん同感だ。これは現実に起きている。だが、それが歴史であり人生だ。定期的に人類は大惨事に直面してる。医学的にも政治的にも環境的にも…不運なことに我々も、いまそういう時代を生きてる」

クリステン
「じゃ、どうすれば?」

グレッグ
「さあな…私も答えを探してる。きっと進み続けるしかない。お互いを思いやりながらな…まだ希望はある」






○大学の講義

アルベール・カミュの『シーシュポスの神話』について…

グレッグ
「冒頭の2行を読んでくれ」

学生
「"哲学上の問題で唯一、重大なものは自殺だ。人生が生きるに値するか否かは、哲学の根本的な問である"」

グレッグ
「カミュは、こう言ってる。我々の人生が不毛で無秩序ならば、死も同じく無意味だとね。我々が自らの存在の"不条理"を受け入れ、毎日、山の上に岩を運び続けたとする。その岩が落ちてくると知りながらだ。もしも我々が、この行動を永遠に繰り返し続けるなら?我々はなんだ?」

学生1
「バカだ」

グレッグ
「ブー」

学生2
「絶望的」

グレッグ
「ブー」

学生3
「英雄」

グレッグ
「YES!exactly!ありがとう、ジュリア…。我々は、最も不条理な英雄となる。答えのない意味を、ひたすら探し続け、命が尽きるまで生き抜く。たとえ我々の人生が、永遠に続く苦悩との戦いや、失敗の連続でも…」



#10

最終回にして一番みんなの距離が離れていく…
そして精神科医のファリドの生い立ちもやっと見えてきた。

信心深いのをアピールするために、自分で傷つけるってどんな信仰心なのか?実際に行われているのか?



○カーメンの部屋

塞ぎ込んだデュークが癒やしを求めに彼女の部屋へ。

デューク
「男たちから母さんを守れなくて自分を責めた」

カーメン
「仕方ないわよ。5歳だったんだもの。子供は事態に混乱して自分のせいだと思いがち」




○ファリド家の地下室

例の武器で自分の背中を打つファリド。
その武器なんで持ってんの?幼きファリドを守るために叔父さんが国外へ逃がしてくれたんでしよ?その武器を一緒に持たせるわけなくない?ファリドもファリドで何でそんなもんを地下室の床下に、今まで隠し持ってんのよ?!




○イスラムの白人指導者の家

ファリドが訪ねる。

指導者
「イスラムでは、全ての答えを得ようとしてはいけない」

ファリド
「では私は罪深い。答えを探すことを生業としてきた。やめるべきか?」

指導者
「"イスラム"とは"降伏"の意味です」

ファリド
「量子物理学の"観察者効果"を知ってるか?観察される現象に対し観察行為が変化をもらたす」

指導者
「私には難しすぎる話です」

ファリド
「それこそ…神がいる証拠だと言う人もいる。……物事が存在するためには見ている者が必要なんだ。その"見ている物事"が…神なんだよ」


だんだんと哲学的になってきた…

なに火山の噴火で終わんの?
工エエェェすべて宙ぶらりん。シーズン2に期待!
Fitzcarraldo

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