ワンコ

カムカムエヴリバディのワンコのレビュー・感想・評価

カムカムエヴリバディ(2021年製作のドラマ)
5.0
【2つの歌を中心に】

2つの歌の一つは、森山直太朗さん作詞作曲で、AIさんが歌う「アルデバラン」だ。

そして、もう一つは、もちろん、作中で何度も取り上げられる「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」だ。

更に、このドラマの中では、ジャズや、R&B、ゴスペルのような曲が奏でられる。最終回を前にした新聞の記事を読んだら、こうした曲の演奏に、渡辺貞夫さんや北村英治さんも加わっていたのだそうだ。
かなりのこだわりだと思う。

僕の初めてのジャズ・コンサートは、渡辺貞夫さんの今はもうない新宿厚生年金会館でのものだったので、なんか懐かしくなった。

「アルデバラン」のフル・コーラスがMVで公開されて、更に、このドラマの物語が進んでいくうちに、この歌詞は、この「カムカム・エブリバディ」の物語そのものじゃないかと思うようになった。

実は、後で知るのだが、これはドラマとは関係なく、森山直太朗さんが、AIさんに楽曲を提供しようという意図で別に作った曲だったらしい。

たぶん、詩は後で書かれたのかもしれないが、こんな素敵な偶然ってあるだろうか。

そして、この曲を毎日のように聴くたびに、目頭が熱くなった。

安子の気持ち、るいの気持ち。

いつかきっと再会するはずだと祈る気持ちになった。
君と私は仲良くなれるはずだ。

森山直太朗さんのお母さん森山良子さん演じるアニーもヒロインの一人だ。

更に、稔の願いをずっと忘れなかった安子と、大戦で戦った日本とアメリカがベースボールや映画を通じて関係が深まっていったさまに、「君とわたし」は、安子とるいだけではなかったことがわかる。

僕たちはいつか誰かのために祈ることをしなくなってしまってはいないか。

もっと、祈っても良いんじゃないのか。

そんな風にも感じる曲だと思った。

ロシアによるウクライナへの侵攻は悲劇だ。しかし、仮に短い間で戦争が終わらなくても、僕たちは、いつか戦後を見据えて何かしなくてはならなくなることは確かだ。日本も、大本営がプーチンのごとく日本国民を洗脳し、戦争に駆り立てていた時代があった。それを考えると、いつか、盲目的だったかもしれないロシア国民とも手を携えることが出来ることを僕は祈りたくなる。

そして、このルイ・アームストロングの「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」の”サニー・サイド”は、「ひなた」のことだ。

安子、ルイと歌い継がれたこの「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」も、更に、登場人物の”ひなた”も、安子とるいを再び巡り合わせたのだ。

公民権運動が大きなうねりとなり始める頃、アフリカ系アメリカ人(黒人)への差別はまだ苛烈だった、そんな状況で作られたこの曲の前向きさは、とても重要だったのだと思う。

この曲の訳は、ひなたの道という語呂の良い感じになっているが、僕は、通りの”ひなたの方”というのが正解だと思う。

通りににも、時間によっては、日の当たる方と当たらない方がある。
でも、日の当たる方を敢えて選んで歩こうよというメッセージなのだと強く思う。

「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」のつたない訳を以下に載せます。

”コートをつかんで、帽子を被ろう

悩み事はドアのステップのところにおいてさ

通りの”ひなた”の方に、自分の二本の脚で向かおう

足音が聞こえないかい?

そう、その曲は君の歩くステップだ

人生は楽しい

通りの”ひなた”にいればね

今までは日陰の方を歩いていた

ブルーなことばっかりでね

でも僕は怖がったりしてないよ

だって、変わったんだもの

たとえ、今一文無しでも

ロック・フェラーみたいに金持ちにだってなれる

足元の埃だって黄金だ

通りの”ひなた”を歩いていればね”
ワンコ

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