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⻘いカフタンの仕立て屋のパピヨンのレビュー・感想・評価

⻘いカフタンの仕立て屋(2022年製作の映画)
4.2
モロッコの女性監督マリヤム·トゥザニの才能が、見事に私のストライクゾーンに飛び込んできました。
モロッコのカフタン(日本の着物?)は母親から娘に受け継がれる逸品で、職人の手で数ヵ月を費やし刺繍が施されるのです。そのカフタン職人のハリムは、同性愛(モロッコでは犯罪)をひた隠しにして仕立て屋の仕事に没頭することで、妻ナミとの生活にバランスを持たせている様です。ナミはそんな夫を過保護の母親の様に包み込んで、店を切り盛りし25年もの結婚生活を送ってきましたが、末期の乳癌が彼女から体力を奪っていきます。そこに美しい若き見習い青年のユーセフが加わり、ここからマリヤム監督の演出が冴えまくります。三人の沈黙が、視線が、表情が言葉を超えて私たちの胸に迫るのです。この息を飲む空間は、嫉妬や哀れみや、愛する気持ちを見事に交差させるのです。ナミが最期に望んだ想いにハリムとユーセフは···。
フランスとベルギー(他のヨーロッパの国々も)は合作が盛んなようで、直近でも「ぼくたちの哲学教室」「すべてうまくいきますように」「CLOSE/クロース」「トリとロキタ」「帰れない山」と怒涛のごとく日本のスクリーンに!日本の映画界も、もっと合作を追求した方がいいのになー。
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