真世紀

ゴジラ-1.0の真世紀のレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.3
特撮に関しては実績を認めているけど、監督のフィルモグラフィーを勘案すると、どうかしらとやや警戒しながら観た本作。

冒頭は1945年の大戸島。神木隆之介演じる特攻隊員の主人公・敷島(そもそも、この名字、最初の特攻隊の隊名由来だよね)は出撃後に機体の故障を訴えて、この島に不時着。されど、機体に異常は見当たらない。その夜、島に恐竜のような怪物が出現。島の伝承ではゴジラと呼称されるその生物は整備兵らの島の駐屯部隊をほぼ壊滅させる。乗ってきた機体の機銃での攻撃を命じられた主人公は怯えて引き金を引けず、他に生き残った橘(青木崇高)に見殺しにしたとの責めを受けて帰還する。

被爆する前のゴジラザウルスと旧日本軍の遭遇は過去作「VSキングギドラ」でも描かれていたが、VSでは日本兵を結果的に守護したのに対して、本作ではまさに蹂躙。頭から咥えて振り飛ばすなど、狂暴に襲い掛かる。

敷島は橘に死んだ整備兵らの形見の写真を押し付けられて東京に帰還。自らの両親も空襲で落命していたことを、やはり、三人の子供ら家族を失った隣家のおばさん(安藤サクラ)から、罵られながら知らされる。闇市で赤子を押し付けられかけたことを切っ掛けに、戦災孤児な典子(浜辺美波)にその赤子(こちらも実は典子がたまたま引き取った孤児)共々、転がり込まれ、疑似家族のような暮らしを始める敷島。日米双方が大戦中に敷設した機雷処理という危険なミッション(配属された船には船長の佐々木蔵之介、元は海軍の技術者キャラで吉岡秀隆、戦争には従軍しなかった若人で山田裕貴)に従事することで生活は安定するが、敷島の心は帰還兵ならでは及び大戸島部隊見殺しのPTSDに蝕まれていた。

そんな彼らの戦後生活はビキニの核実験で変貌を遂げたゴジラの日本上陸で敗戦占領という状況下でさらなるドツボを迎えるのであった。

もうこのゴジラが大の大人でも泣きたくなるほどの怖さ。本作のゴジラ、再生能力まで備えているチート振りで、それこそ戦艦の艦砲射撃にも耐えるレベル。

本土上陸では銀座を襲撃。日本劇場を崩壊させ、放送スタッフを殉職させて、挙げ句に響き渡るあの伊福部メロディー。一作目のゴジラ、モノクロだったのが本作である意味、カラーリメイクが果たされたんですな。

この銀座での惨事は印象的。本作ゴジラ、背中のヒレが下部から順次、青白い光を帯びた果てに口から青白い熱線が放射され、ゴジラに踏み潰されたりと逃げ惑っていた人々すら思わず足を止めてしまう。

こんなゴジラに敗戦直後、限られた物資で戦いを挑まざるを得ない主人公らをはじめとする日本国民。本作の企画を聞いた時点で、え、そんな日本にゴジラに来られて、オキシジェンデストロイヤーでもなければどうやって撃退するの?という疑問にも取り組んでいるのは好感。これ以上はまだ公開直後なので筆を控えるが、歴代のゴジラシリーズの中でも上位を占める一作に仕上げてきたなぁ。

以下はややネタバレ。













結構、印象よく観てきたけど、さすがに最終盤の電報以下のくだりはどうよと鼻白んだ。けど、本作のゴジラの特徴を踏まえて妄想するとあの方、吹き飛びがてら四散していたG細胞にも付着。その結果として蘇生してなんだったのではとついつい思っちゃうよな。きっと次作ではG細胞争奪戦が米ソの間て起こるなか、日本の保持者がヒドイ目に会うのでは?
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