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ロスト・フライトのfujisanのレビュー・感想・評価

ロスト・フライト(2022年製作の映画)
3.7
原題が plane(飛行機) である意味

ジェラルドバトラーお得意の脳筋映画と思いきや、よく練られた意外性のあるプロットと、低予算映画ながら現実性にこだわり抜いた渋い名作でした。

元英空軍のパイロット、トランス(ジェラルド・バトラー)は、過去に暴力事件を起こしたことで、今は弱小LCCのパイロット。頑丈ながら型落ちの古い機体を操縦し、会社からは燃料が節約出来るルートを飛ぶことを指示されています。

ある日のホノルル便。嵐を上空で回避するよう指示された飛行機は、雷の直撃により全電源を喪失し、フィリピンのとある島へ不時着。安心したのもつかの間、そこは武装ゲリラが支配する無政府状態の島だったのでした、、というストーリー。

この時点でジェラルド・バトラー無双によるゲリラとの大バトル、と想像がつく訳ですが、これは半分正解、半分不正解。『あれ?この人意外に◯◯だわ』、とか、『このパターンだとこうなるよね・・・あれ?』という感じで、おそらく映画を観ている人ほどミスリードされてしまうのでは?、という楽しさがありました。

また、意外性あるプロットが、精緻な脚本と演出で補強されており、何気ない序盤の展開が次々につながっていく見事さがありました。
たとえば、本作のジャケ写をよく見ると、煙が出ているのは片方のエンジンからだけですが、これにもちゃんと理由がありました。

本作のレビューを書くにあたり、うっかり宇多丸さんによる本作の素晴らしすぎる映画評を聴いてしまったので、何を書いてもしょうがないのですが、本作の原題がPLANE(飛行機)である、ということにちゃんと意味がある、ということだけは書いておきたいと思います。

低予算映画ながら、同じジェラルド・バトラーが主演した映画、「カンダハル」の3倍近い興行収入を上げてしまうところが、映画の面白いところですね。監督と脚本と俳優、全てがハイレベルで融合すると、低予算でも面白い映画が撮れるという見本のような作品だと思いました。

参考:
【前編】宇多丸『ロスト・フライト』を語る!【映画評書き起こし 2023. 12.7放送】 | TBSラジオ
https://www.tbsradio.jp/articles/78020/

【後編】宇多丸『ロスト・フライト』を語る!【映画評書き起こし 2023. 12.7放送】 | TBSラジオ
https://www.tbsradio.jp/articles/78021/



余談ですが、本作で印象的だったのは、リアルなガンアクションバトルシーン。
犯人を護送する刑事役や現地へ救出に向かう部隊の隊員たちは元ネイビーシールズなどの軍隊経験者であるところもリアルなところでした。

特に、バレットM82という巨大な対物ライフルで、車を盾に隠れる敵を、車ごとぶち抜いて倒すシーンは大迫力。この映画で気になってYoutubeで調べてしまったのですが、銃弾一つが、作家が使う太い万年筆ぐらいあるんですね。

このあたりの扱いも正確らしく、本作がミリタリーマニアからも受けている理由なんだな、ということが分かりました。

続編も制作中で、次は「SHIP(船)」らしいです。思い切って、原題のままのタイトルで公開して欲しいところです😎
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