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落下の解剖学のRenzのネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

犯人探しのようにみせかけて、実はマリッジストーリーのように、夫婦地獄ものといった要素の方が強い映画。結婚したくなくなるタイプの映画です。

でも、このみせかけが大事で、落下の解剖学という好奇心を促すタイトル含めて、2時間半ある映画を集中して観させる源動力となっています。
それに引き込まれて、実際の時間よりは短く感じたので、映画としての出来も素晴らしいと思います。でもねえ。
…悪い、やっぱなげぇわ。2時間ぐらいでいけたよね。

夫が屋根裏から落下し命を落とし、妻である主人公が犯人と疑われます。
目撃者(というより第1発見者といった方が正しいような)は視覚障がいのある息子だけ。

本作は犯人探しではなく、主人公が有罪か無罪かの法廷劇の部分がメインなのですが、そこで夫婦間の問題が露わになっていきます。証人として呼ばれている息子は、その隠されてきた両親の問題を知ることになります。

その問題とは、父親は自分が送り迎えしなかったために、息子が事故に遭い視覚障がいになったと自分を責めていること。
小説家になりたかったがうまくいかず、小説家としてうまくいってる妻に嫉妬していること。
譲った一部アイデアをいかして妻がヒット作を作り上げたことにも嫉妬し、精神を病んでいたこと。
母親(主人公)はバイセクシャルであり、女性と不倫していたこと。その原因として、上記の理由で夫とセックスレスになっていたこと。

そんなことを11歳の息子が知らされるわけです。

そもそもこの裁判、事実だけでなく想像や主観で発言し過ぎです。夫婦の喧嘩も殺人の理由にするには無理がある範囲。というか夫の方が精神不安定な感じなのに主人公が悪い流れに持っていったりも酷い。しかも、11歳の視覚障がいのある子供に詰め寄ったりと問題ありまくりです。日本だったら証拠不十分ですぐ無罪となりそうだけどな。フランスの裁判ってこんなものなの?
たしかにアメリカの裁判も日本の裁判も別の問題があったり、冤罪事件もあるけれども、いくらなんでもねえ。

…ともかく、11歳の息子に両親の問題を隠さずにさらけ出し、息子が(母親を助けるかどうか)ジャッジするような感じになっており、そこが重要な映画になっています。

結局、息子の証言により無罪を勝ち取るのですが、その理屈もちょっと納得がいかない。
息子の発言も二転三転しており、事実ははっきりしていない。
それで無罪になるのならそもそも証拠不十分で無罪だろ、と思ったり。

本当に自殺なのか?やはり主人公がやったのかも、それとも事故か、第三者か?分からないまま終わります。
なのでそこで好き嫌いが分かれるでしょう。
私ははっきり事実を知りたい方だけど、この映画でもし真相を最後に出したら、映画として興ざめなのかもしれない。

そんな内容なので主人公と息子の役者の演技力
が重要になるわけですが、それが素晴らしかったです。

でも一つだけ。息子君よ、母を救うためとはいえ、犬🐶を可哀想な目に遭わせるのは、許さん👹!!
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