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ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワーのtorumanのレビュー・感想・評価

3.8
アニエス・ヴァルダ、シャンタル・アケルマンを信奉し、ケリー・ライカートと共にアメリカインディペンデントを背負う監督ニナ・メンケスの挑発的な講義をパッケージ化したドキュメンタリーです。

男性目線で描かれ、女性はあくまで受動的に鑑賞される対象として描かれてきた映画の歴史を、世界的に有名な作品170本を元に暴き出しています。

世界中で名作・傑作と言われた作品たちが、"男性目線"の作品として、バッサバッサと斬られていきます。
自分の好きな作品が次々と斬られる気まずさと、それに相反する気持ち良さを感じます。

冒頭は『めまい』をパロディ化した音楽とソウルバス的な映像から始まります。
ヒッチコックは『めまい』以外に『汚名』でも、女性を平板に見せる平面的な照明が指摘され…
『ブレードランナー』は続編も含めて、女性に対する単純で偏見的な見方を揶揄され…
女性を観賞用としたカメラワークの作品として、PTA、タラちゃん、デ・パルマと次々にやり玉に…
スコセッシも作品2本を言及されており、『アフター・アワーズ』に至っては、ロザンナ・アークエットに、「私の役って必要だった?」と言わせています。

バラエティーに富んだ作品の一部を観ているだけで楽しいですが、男性視点として見せる映画技法の説明は、とても興味深いし、「ハリウッドは合衆国のあらゆる産業の中で、最も酷い雇用差別」というテーマも強く心に訴えてきます。

カメラ視点の多くは、男性化(主体化)したカメラ目線になっており、観客に無意識に女性を観賞用として見せているそう。
照明は男性を立体的な照明で、キリッと主人公として目立たせ、女性はフラットな照明で、ぼんやりと受動的に見せてしまう。
さらに、音楽を含めた相乗効果で、女性の観客もいつの間にか男性目線で映画を観てしまっている…💦

ニナ・メンケス監督
猫とネズミの関係を映画の中の男と女に例えるやり方等、誘導的かつ作為的に感じる部分もあり、彼女の主張の押し出しの強さがちょっと苦手と思うのも正直な所です。

ただ、真っ直ぐな映画愛を感じるし、挿入されている自身の作品の映像は非常に鮮烈!好みです!
まだ、劇映画は観ていませんが、一見の価値はありそう、まずは一作観てみたいです。
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