イージーライター

人間の境界のイージーライターのレビュー・感想・評価

人間の境界(2023年製作の映画)
4.5
自分自身の不明を恥じるのだが、シリア、アフガニスタンからのといった難民を、ベラルーシ、ポーランドの国境で、サッカーボールごとく送り合いしていたらしい。ベラルーシはともかく、一応、西側に属しEUのメンバーたるポーランドが、ベラルーシから来た、難民を国境地帯に送り返していたということだ。当然、難民がそこを行き来しつついている間に、怪我をし、命を落とす。なお怪我をするという中には、なんと、ポーランドの国境警備隊の物理的行使もその理由の一つだから、本当に驚いてしまう。それも数年前のこと。 

今年みた映画の中で、これほど、自分の良心と欺瞞が試されたと感じるものはない。ここで言う、良心とは、この世の中の不正をこの映画を通じて垣間見ることで沸き立つ正義感からくるものだが、欺瞞というのは、この映画の制作者がラストにおいて、私たちの日常に存在している私たちの良心や義侠心みたいものについて、問うてくるシーンについて、そう書いている。それがなにかは書かないが、ぜひ見て私が書くところを追体験してほしい。 

2時間半の長尺だが、難民家族の死の行軍を時系列に沿って順列に描きながらも、当事者、国境警備隊、難民支援者などそれぞれの視点をパートに分けて見せるという技のお陰でだらけさせらない。この技だけとっても、この作品のレベルの高さの証である。 

なお、久々に唸らされた邦題。原題は「green border(みどりの国境)」。邦題のほうが、この映画のテーマの深さをトレースできている。

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