ぶみ

隣人X 疑惑の彼女のぶみのレビュー・感想・評価

隣人X 疑惑の彼女(2023年製作の映画)
3.0
愛した人の本当の姿を、あなたは知っていますか?

パリュスあや子が上梓した『隣人X』を、熊澤尚人監督、脚本、上野樹里、林遣都主演により映像化したSFドラマ。
故郷の惑星を追われ、宇宙から難民として地球にやってきた「X」と呼ばれる生命体を受け入れることとなった日本において、動揺する人々の姿を描く。
原作は未読。
Xについての記事を書く週刊紙の記者・笹憲太郎を林、X疑惑のある女性・柏木良子を上野、柏木同様、X疑惑をかけられる台湾からの留学生リン・イレンをファン・ペイチャ、良子の両親を酒向芳、原日出子が演じているほか、野村周平、嶋田久作、バカリズム、川瀬陽太等が登場。
物語は、Xが人間には危害を加えないとは言うものの、人間そっくりの姿で日常に紛れ込んでいることから、週刊誌といったマスコミを中心に、Xを見つけ出そうと躍起になる人々が描かれていくのだが、その設定については、冒頭にサラリと説明があるだけであり、以降も前述のように、Xが人間そっくりであることから、笹が登場する場面で、時折それらしいシーンがあるものの、SF的な演出は非常に少なく、Xかどうかを探り出そうと笹が良子に近づいていくうちに恋愛感情を抱くようになるという、ミステリ・ロマンス的な雰囲気で進行していったのは意外なところ。
特に、主役二人を演じた上野に林、両親を演じた酒向や原の演技は素晴らしく、先日観た中島央監督『TOKYO , I LOVE YOU』の学園祭のような作品があったことを思うと、こちらが当たり前なのだが、キャストの演技力の確かさに、あらためて気づかされたところ。
ただ、マスコミをマスゴミとして描きたいのはわかるが、パワハラ上等で体育会系な編集部であったり、対象者に殺到して矢継ぎ早に心無い質問を投げかける記者の姿は、流石に一時代前のものであり、もっとアップデートして欲しかったと思うとともに、週刊誌の編集長を演じた嶋田の滑舌が悪いせいか、声は大きいものの今一つ聞き取れなかったのが、編集でどうにかならなかったのかと感じた次第。
また、クルマ好きの視点からすると、笹が良子をドライブに誘った際に借りてきたクルマが、2代目となるトヨタ・ランドクルーザープラドなのだが、本来は角形ヘッドライトであるはずの5ドアモデルに対し、丸型にカスタマイズした車両が登場したのは、レンタカーではなく、いかにも知人から借りてきた感が滲み出ていて良かったところ。
SFサスペンスとして観てしまうと物足りなさを感じてしまうし、テンポの悪さから長さを感じてしまったのが玉に瑕だが、アイデンティティとは何かをテーマに据えた恋愛ドラマだと考えると、面白い仕上がりとなっており、何故だか途中から林が阿部寛に見えてきたと同時に、雨が降り始めた時の匂いを「ペトリコール」なるものだと知ることができた一作。

何でもかんでもアメリカの追従でさ。
ぶみ

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