ルーク大佐

アメリカン・フィクションのルーク大佐のレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
4.0
コンテンツ制作にかかわる仕事をしている人ならばニガ笑いし、赤面し、そして共感する映画だと思う。自分が世の中に売り出す作品が売れなかった場合、何が悪いのか。映画や小説のクオリティか、そのクオリティを理解できない大衆か、あるいはマーケティングか?

こんな悩みをもつクリエイターは多い。コンテンツが売れないのはクオリティのせいでも世の中のせいでもなければユーザーのせいでもない。

いや、決して一つの理由に絞れないのだ。マーケティング手法やタイトルや時代性などによって、同じ作品でもバカ売れするときもあれば初版で終わることもある。運やタイミングという合理的に計測できない事情でヒットの可能性が変わってくる。ほとんど博打に近い。それがコンテンツビジネスの難しさなのだ。

さて、本作はそうした映画、コンテンツ業界の事情を皮肉り、クリエイターのジレンマを正面から解きほぐし、黒人映画ならではの“ブラックユーモア”に溢れた快作だ。
白人は常に(黒人に)罪悪感をもって生きているという主張は、当事者の黒人だから言えること。

ポリコレ全盛時代に辟易し、弱者仕草でカネをもぎとることしか考えない“エセリベラル人”に強烈なパンチを放つ作品だ。

現在の日本でも弱者や被害者ぶる集団が国の寄付金や補助金目当てで、弱者詐欺ビジネスをやらかし、国会でも社会問題になっている。リベラルの皮を着たハイエナがあちこちで一般の日本人から税金を搾取している現状を思い出さずにはいられなかった。

主役ジェフリー・ライトの悩める作家の演技はうまいし、映画内映画のオチはハリウッド映画特有の軽薄さが盛り込まれ、バッチリ決まっている。

家族との絆や主人公の頑なすぎる思考がほぐれ、自己成長を遂げる流れも巧みだ。付け加えるとすれば、ベストセラー黒人女性作家との駆け引きをもっと多面的なテーマで繰り広げてほしかった。
ルーク大佐

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